破綻したFTXの日本法人が資金を確保できたわけ
冒頭紹介したFTXは、破綻後の不正アクセスなどが原因で、資産の大部分の行方が分かっていません。しかし、同社の日本法人であるFTX Japanは、事件後に顧客からの預かり以上の資産を保全できていると発表しています(2022年12月26日時点)。
なぜFTX Japanは資産を守ることができたのでしょうか。それは、利用者の資産が守られるよう法律が改正されたためです。
「資金決済法」が2019年5月に改正され、国内の暗号資産交換業者は、自身の資産と顧客の資産を分けて管理するよう義務付けられました。管理の方法も定められており、金銭については信託銀行で、暗号資産についてはコールドウォレット(※)など保護に欠けるおそれの少ない方法によって管理しなければいけません。
※コールドウォレット:暗号資産を保管する媒体(ウォレット)のうち、インターネットにつながっていないもの
【資金決済法第63条の11「利用者財産の管理」(一部抜粋)】
1.暗号資産交換業者は、……利用者の金銭を、自己の金銭と分別して管理し……信託会社等に信託しなければならない。
2.暗号資産交換業者は……利用者の暗号資産を自己の暗号資産と分別して管理しなければならない。この場合において、当該暗号資産交換業者は、利用者の暗号資産……を利用者の保護に欠けるおそれが少ない……方法で管理しなければならない。
3.暗号資産交換業者は……定期に、公認会計士……又は監査法人の監査を受けなければならない。
出所:e-Gov法令検索 資金決済に関する法律
FTX Japanもこの規定に則って運営されていたため、利用者の資産を守ることができました。
なお、親会社のFTXは昨年12月、FTX Japanを含む子会社の売却を裁判所に申請しています。承認されれば3月に競売が実施され、FTX Japanは新しい買い手の下で再建を進めることになるでしょう。
また、FTX Japanは本記事執筆時点でまだ顧客へ資産を返還できていませんが、FTX JapanはFTXによる子会社の売却が返還プロセスに影響を与えることはないと説明しています。出金および出庫は、2月中旬ごろに「Liquid Japan」の口座を通じて行われる予定です。
出所:FTX Japan お客様への資産返還に関するご案内(2022年12月29日)
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。