60歳台前半の年金と、65歳以降の年金はそれぞれに手続きが必要
60歳台前半の年金と65歳以降の年金は、それぞれについて手続きがあり、両者を分けて考える必要があります。
65歳以降の年金
65歳以降終身で受けられる老齢基礎年金・老齢厚生年金については繰下げ受給制度があります。第6回(増えない年金もある!? “年金額最大84%アップ”で注目の「繰下げ受給」に潜むワナ)で取り上げたとおり、受給の開始を遅らせて年金を増額させることがますが、それぞれ受け取りを始めたい時になって手続きをすることになります。
例えば、67歳0カ月開始で老齢基礎年金・老齢厚生年金の繰下げを希望する場合は、67歳0カ月まで繰下げ待機します。繰下げ待機とは、年金の用語でいえば、年金請求をしない、ということですが、ここでは“あえて”何もしない、とご理解いただいて問題ありません。そして、67歳を迎える時になって手続きします。
ちなみに、あまり知られていませんが、繰下げとは異なる方法として、「65歳にさかのぼって受給する方法」も存在します。上記の67歳まで待機した場合でいうと、65・66歳の2年分の年金が一括で払って受け取れるように請求する、ということです。この方法の場合、単に65歳・66歳の分を後でまとめて受け取っているだけなので、当然ながら、繰下げの場合のような増額はありません。
60歳台前半の特別支給の厚生年金(生年月日など、要件を満たす一部の人が対象)
生年月日によって、60歳台前半で受けられることがある特別支給の老齢厚生年金は65歳までの有期年金です。
例えば、63歳が支給開始年齢の人の場合、63歳から65歳までの2年間支給されることになります。この特別支給の老齢厚生年金について繰下げ受給制度はありませんし、65歳以降の年金の繰下げ受給にも影響はありません。
特別支給の老齢厚生年金について「繰下げ制度で増額できる」「受け取らないほうが65歳からの年金額は増額できる」と思い、支給開始年齢になっても手続きをせず、かなり後になって初めて手続きをする人もいます。
しかし、例えば65歳になってから手続きをしても、当該年金については65歳から支給開始年齢にさかのぼって支給されるにすぎません。繰下げによる増額ということはなく、支給開始年齢が63歳であれば、過去2年さかのぼって、その2年分が一括で支給されるのみです。
そして、特別支給の年金を受け取っていたとしても、65歳以降の年金については、別途65歳開始で受給するか、繰下げ受給するかを考えることになります。65歳以降の年金について希望する受給方法(65歳開始、〇歳〇カ月繰下げ受給、など)に応じた手続きをすることになる点は、63歳で特別支給の老齢厚生年金の手続きをすでにしている場合と65歳になって初めてその手続きをする場合とで変わりありません。