為替変動で元本割れのリスクも
先述した日経新聞の記事によると、「ソニー銀行では11月単月の外貨定期預金の新規預入額が2月比3倍になった」とし、「大和ネクスト銀行でも定期預金残高が増えている」という。また、「新生銀行では11月、新規で外貨取引を始めた顧客の数が前年同月比3.8倍に増加した。月間の延べ取引人数も、5割近く増えている」と書かれています。10月21日に1ドル=151円94銭まで進んだドル高が一服し、12月12日時点では1ドル=136円近辺で推移していますが、円安期待が残っているなかでは、今の水準はむしろドル買いのチャンスに映っているのかも知れません。
ただ、外貨定期預金の高金利が注目されるなか、心にとどめておく必要があるのは、単に金利が高いからという理由だけで預けると、大きく目論見を外してしまう恐れがあることです。
外貨定期預金の収益は利息だけでなく、為替差益もあります。利息は年4%でも、前述したように為替レートは年間を通じて大きく動きますから、もし円高が大きく進んだ場合は、年4%の利息収入が得られたとしても、為替差損によって損失を被ることになります。
前述のケースで説明すると、1ドル=135円で1万ドルの外貨定期預金を作成し、1年間で4%の利息を得た場合、税引後の元利合計金額は1万318.74ドルですが、満期時の為替レートが1ドル=130円になっていたら、円建ての元利合計金額は134万1436円ですから元本を割ってしまいます。不幸にして1ドル=120円という円高になったら、円建ての元利合計金額は123万8248円ですから、円建ての預入金額から見ると6万円超の損失を被ることになります。
このように為替レートのボラティリティを考えると、年4%の利息収入が得られたとしても、トータルの収益面において、それほどのメリットにはならないと考えられるのです。
確かに円安が進めば、為替差益という収益を得ることは出来ますが、為替差益の源泉となる為替レートの変動は、通貨の資産価値そのものが向上することでもたらされるものではなく、単に異なる2通貨間の交換比率に過ぎません。
投資は資産価値が向上すると期待されるものに資金を投じることですから、外貨定期預金のように通貨の交換比率の変動に期待して資金を投じるのは、投資というよりも投機的な行為であると考えられるのです。