トレンド3:AmazonやAppleも自社コンテンツに本腰
最後に米メガテック企業の観点から各社動向を見ていきたい。Amazonは2022年9月、2000年代初頭に公開された大作映画『ロード・オブ・ザリング』シリーズの続編をAmazon Prime Videoのオリジナルドラマとして配信し始めた。
注目すべきは巨額の制作費。配信予定である全シリーズの合計は約10億ドルにのぼると見られている。これはドラマ作品のなかでは最大規模の金額と言われている。Amazonは同作品の映像化権を獲得するため別途2億5000万ドルも支出しており、事業への力の入れ具合がうかがえる。
2021年におけるAmazonの動画・音楽コンテンツ分野への投資は約130億ドルと、2020年の110億ドルから2割以上増加。徐々にエンターテインメント事業への投資を拡大させていることがわかる。
ネット通販やクラウドなど様々な事業で莫大な収益を上げているAmazonは、コンテンツ制作に巨額の費用を投じられるのが大きな強みだ。こうしたコンテンツへの投資が今後も続けば、いずれ動画配信市場においても業界をリードしていくかもしれない。
一方、Amazonと並ぶ世界的企業Appleも、Apple TV+においてオリジナルコンテンツの拡充を進めている。日本では劇場公開された『コーダ あいのうた』もApple TV+で当初独占配信されていた映画だ。配信後に様々な地域で好評を得た上、動画配信作品として初めてアカデミー賞作品賞を受賞する快挙を成し遂げた。
Apple TV+はNetflixやAmazonと比べると、事業規模やコンテンツ数でまだまだ見劣りする部分があるといえる。しかしAmazonと同じく巨大資本をバックに、今後もさらなるコンテンツへの投資が期待できるだろう。Appleのエンターテインメント事業は、為替やサプライチェーンの影響で伸び悩む「Mac」や「iPad」といったハードウェア事業と比較すると伸び代が大きいといえる。
このように、動画配信を主軸とするトップランナーNetflixに対し、ほかの事業分野も手掛ける大手が猛追している構図がうかがえる。動画配信のサブスクリプションサービスはグロース株としても注目されることの多い分野だ。個人投資家としてはNetflixが広告モデル導入でさらなる巻き返しを図れるか、そしてサービスの統合などで、業界の勢力図がどう変わっていくかを見極めていく必要があるだろう。