皆さんは通院や入院した際の領収書をどうしているでしょうか。明細書にズラリと並ぶ診療点数を眺めても理解できず、請求額を確認してバッグや財布に入れる人は少なくないでしょう。捨てずに保管している人はさておき、「もう用済み」とゴミ箱に入れてしまう人は損をしている可能性があります。年間外来受診回数が世界トップレベル、生涯で使う医療費が約2700万円に上る日本において知らないと損をする制度を解説します。
データから読み解く! 医療費に関する日本の実態
19万8000円――。公益財団法人「生命保険文化センター」が2022年10月に公表した調査結果によると、過去5年間に入院した人の自己負担費用の平均は20万円弱に上ります。回答の中では「10~20万円未満」が33.7%で最も多く、「5~10万円未満」は26.5%、「20~30万円未満」は11.5%で、約6%は「50~100万円未満」も負担しています。入院日数は平均17.7日で、1日当たりの負担費用は平均2万700円。気をつけていても病気や事故と無縁のまま生涯を閉じる人は稀であり、その負担額は決して小さくはありません。
入院せずとも通院で医療機関のお世話になる人は多いでしょう。日本の外来受診回数は国民1人当たり年間12.6回。これは経済協力開発機構(OECD)の加盟国平均6.8回の2倍近くに上っています。1人当たりの医療費を見ると、65歳未満は19万1900円ですが、65歳以上は75万4200円と4倍弱。65歳以上で生涯医療費(約2700万円)の約6割を費やす計算になります。これは健康保険の給付費との合計額ですが、かかった費用の1~3割は自己負担です。
また、厚生労働省の「医療給付実態調査」(2018年度)によると、自己負担額(年額)は20代で4.1万円、30代は5.5万円、40代は7.3万円、50代は11.1万円、60代は16.1万円と右肩上がりに上昇しています。負担額が所得や年齢によって変わる70代は14.4万円、80代は16.5万円、90代は17.6万円となっています。
2022年7月に発表された日本人の平均寿命は男性81.47歳、女性87.57歳。2040年時点で65歳を迎える男性の4割は90歳まで、女性の2割は100歳まで生存すると推測されています。ただ、日常生活に制限のない期間を指す「健康寿命」は男性72.68歳、女性75.38歳であり、平均寿命との差は男性で8.79年、女性で12.19年もあります。
健康寿命を迎えてからの間に通院や手術を経験する人は少なくありません。国民年金(満額)月6万5000円、厚生年金のモデル世帯(夫婦2人の標準)が約22万円受給であることを考えると、医療費の負担は大きいものがあります。70歳以降に限ってみれば、300万円超の自己負担が発生する可能性があるのです。
ただ、世界に冠たる「国民皆保険制度」がある日本には、医療費の負担を軽減する公的制度があります。高額な医療費の負担を敬遠して受診を控える人も見られていますが、病気は早期発見・早期治療が原則です。健やかに長生きするため、そして損をしないために「医療費控除」と「高額療養費制度」の2つは活用しましょう。