個人だけでなく社会全体の経済活動を支える投資

それでは改めて、投資を行う意味とはなんだろうか。

インフレでは物の値段が上がるため、相対的に現金の価値が低くなる。歴史的な低金利が続く今、預貯金として持っていても資産は目減りしてしまう可能性が高い。

その点、投資はインフレ対策として有効な手段の一つである。

インフレは企業の業績拡大につながる。株式や投資信託といった資産を保有しておけば、物価上昇に負けないペースで資産を増やすこともできるのだ。

しかし前述のように価格転嫁ができず、収益アップが見込めない企業もある。収益が増えなければ、株価の上昇も期待できない。賃金の引き上げも十分に行えない恐れもある。

そこで投資のもう一つの意味についても考えたい。

投資は企業の応援にもつながる。

例えば、資金調達。企業は新規上場時以外でも、株式発行によって市場を通じて投資家からお金を集められる。このとき、発行する株式の株価が高いほうが調達できるお金も多くなる。

株価が上昇すれば「発行株式数×株価」である時価総額もアップする。時価総額は企業価値を示す指標でもあり、金融機関の融資判断の材料でもあることから株価が高い方が企業はお金を借りやすくなるメリットもある。

資金調達以外にも目を向けてみよう。資金が増えた企業は設備投資を行い、事業拡大や業績改善が望める。その結果として従業員の賃金アップに貢献できることも踏まえれば、投資はまさにその企業を応援するアクションといっていいだろう。

また、投資が生み出す影響は対象の企業に限らない。事業拡大により、私たちの暮らしに役立つ新しいサービスが社会に生まれる可能性もある。賃金が上がればモノやサービスの値上げに対する消費者の抵抗感も弱まり、企業が価格転嫁しやすい環境ができるかもしれない。その結果、良いインフレの循環に参加できる企業も増えていくはずだ。

このように個人と社会全体の経済活動を守る役割も、投資は秘めているといえるだろう。

文/笠木 渉太(ペロンパワークス)