「老後の備えは自分で作らなくてはいけない」そんな危機感がコロナ禍でさらに膨らみ、投資を始める人が増えている。しかし、そうはいっても奥深いのが投資の世界。慣れれば慣れるほど疑問や不測の事態に直面することも増えてくる。

そこで、この連載では「資産形成3年目だからこそ知りたい」用語や投資情報を解説する。11回目となる今回は「インフレと投資」について。

足元の物価高が家計に与える影響は計り知れないが、投資の観点からいえば物価が上昇するインフレは必ずしも悪い状態ではないといえる。商品の値上げは企業の収益増加、ひいては株価の上昇につながることもあるからだ。インフレが進むなか改めて、投資を行う意味について考える。

2022年の値上げは調味料から外食、アプリまでも対象に

ウクライナ情勢を受けた原油価格の高騰や1ドル=140円台前半という歴史的な円安を背景に、足元ではさまざまな商品で値上げラッシュが続いている。帝国データバンクの調査によれば、2022年10月に値上げする商品は食料品だけでも約6700品目、年内では累計で2万品目以上にのぼる。

たとえば、マーガリンなどの家庭用油脂類や市販用冷凍食品など食品56品を順次値上げすると発表した明治は「明治デイズキッチンスライスチーズ7枚入」の価格を希望小売価格(税別)を320円から360円に引き上げている※1。全93アイテムの価格改定を発表したキユーピーでも同様に「キユーピー マヨネーズ(450g)」の参考小売価格(税込)を436円から475円に改定する判断をした。

※1 明治、「コーンソフト」など56品値上げ 最大15.5%(日本経済新聞)
※2 家庭用商品 価格改定のお知らせ(キユーピー企業サイト)

さらに、スシローは1984年の創業以来38年間続けていた1皿110円(税込)の寿司を廃止。各店で現行価格から9〜38円の値上げを実施した※3。また、値上げの対象は食品だけではない。アップルでは「App Store」を通じて販売する有料アプリやアプリ内の課金サービス(自動更新サブスクリプションを除く)の最低価格を改定。日本のApp Storeにおける最低価格(税込)は120円から160円となり、約33%の値上げとなった。

※3 国内スシローにおける価格改定・店舗区分の見直しについて(FOOD & LIFE)
※4 App Store Pricing(JPY)(Apple)

このほかアサヒビールではビール系飲料について6〜10%程度、王子ネピアでもトイレットロールなどの紙製品を15%以上値上げ。内容量を削減した実質的な値上げを行う商品もあった。

家庭で消費するモノやサービスの値動きの指標となる「消費者物価指数」は、2022年8月時点の総合指数は前年同月比3.0%増、生鮮食品を除く総合指数は2.8%増。いずれも5ヵ月連続で2%を上回った。

年平均ではあるが、2009年以降同指数は消費増税が行われた2014年を除き前年比プラスマイナス1%台で推移している。このことを踏まえると、2022年の物価上昇率は記録的といえるだろう。