数々の経営者との出会いで起業を志すことに
ファンドマネジャーとして担当させられたのは中堅中小企業でした。本音を言いますと、中堅中小企業の経営者に会うのが、当時は苦痛でした。なぜなら当時の中堅中小企業の経営者というと、いささか生臭い感じのするおやじばかりだったからです。そのおやじが机をバンバン叩きながら、口角泡を飛ばして自分たちの事業内容を語りまくるのです。暑苦しいというか、何というか、まだまだ青かった自分にとっては、荷が重かったのです。
ところが、そういう新規公開企業の経営者に1日で2人から3人くらいにお会いして、それを2年くらい続けたある瞬間、自分の見方が大きく変わってきたことに気付きました。
それは、世間一般に良いイメージを持たれている大企業の方がマニピュレートされた存在であり、私が日々会っている中堅中小企業の方がリアルワールドであるように思えてきたのです。中堅中小企業こそが日本経済を支えているし、中堅中小企業の経営者こそが、生きていくうえでのプロトタイプではないかと考えるようになりました。
すると、かつては応接のテーブルを挟んで経営者と対峙する時にテーブルが自分の身を守るためのバリアだったのが、段々、自分が乗り越えるべき障壁であるように思えてきたのです。その障壁を乗り越えた先に何があるのかというと、実は自分自身が経営者になりたいという気持ちがあり、それがどんどん膨らんでいったのです。
大勢の経営者に会っているうちに、経営者たちの山あり谷ありの人生に興味を持つようになりました。事業を通じて無から有を生みだし、社員を雇うことで雇用を生み出し、利益の一部から税金を払って社会に貢献する。これってすごいことだなと思うようになったのです。確かに、私は今、レオス・キャピタルワークスという資産運用会社の創業者であるのと同時に、ファンドの最高投資責任者ですから、世間的には「投資家」というイメージで見られていますが、それ以前に経営者なのです。「ファンドマネジャー兼経営者としていつか起業しよう」。そう思ったのが、野村投資顧問で働いていた最後の頃の話です。