国際収支の不均衡により押し上げられる経済成長

各国による国際収支の集計は、国際通貨基金(IMF)が作成するマニュアルに基づいて行われており、IMFは各国の経常収支と対外純資産を集計した時系列グラフを公表しています(図1参照)。経常収支黒字国があれば世界のどこかに必ず経常収支赤字国があり、対外純資産がプラスの国があれば世界のどこかに必ず対外純資産がマイナスの国があるため、グラフはプラスマイナス両方向に概ね同じ大きさとなります。このプラスマイナスの絶対値の合計は、国際収支の不均衡と呼ばれることがあります。

 

現在、世界の中で経常赤字、さらに対外純資産がマイナスとなっている中心の国は一貫して米国です。言い換えると米国は他の国から債券・株式等の形で資本拠出を受けることで、将来の生産・消費を大幅に拡大させ、経済の成長ペースの押し上げを実現してきたと言えるでしょう。さらに、米国の生産拡大が他の国の消費拡大余地を生み、米国の消費拡大が他の国の生産拡大余地を生むことで、世界経済の成長ペースも押し上げられてきました。

グローバル投資により金融資産を守り、育てていこうとする私たち日本人投資家は、国際収支からどのような示唆を得られるでしょうか。これまで解説してきた通り、国際収支は国内では消費にも投資にも充てられなかった資本が国境を越えて拠出され、国外の将来の生産・消費に必要な資本として活用されていることを示しています。

つまり国際収支の不均衡は、世界の資本が世界の経済成長のために効率的に活用されていることを示す数字であると言えます。