不均衡の拡大は経済の過熱と急減速を生むことも

一方で、国際収支の不均衡の拡大は、資本が効率的に活用され過ぎており、付加価値の十分な成長が期待できないにもかかわらず、国境を越える資本の拠出・調達により、付加価値の成長を上回るペースでの経済成長が実現されてしまっている状況を示している場合があります。このような成長ペースは持続可能ではなく、今度は付加価値の成長に見合う水準まで経済の成長ペースに下押し圧力が掛かるようになります。このような経済成長の過熱と急減速は、金融資産のバブルとその崩壊を伴うおそれがあります。

米国の経常赤字は、2006 年まで拡大を続けた後、金融危機によって経済成長が減速から後退になった 2009 年まで急速に縮小しました。2006 年までの住宅バブルを支えたのが、米国以外からの米国国債や不動産証券化商品に対する投資であったのも、国際収支の不均衡と経済成長の密接な関係を示すものと言えるでしょう。

その後、世界経済はプラス成長に回帰し、米国の経常赤字も大幅な増減はなく推移してきましたが、新型コロナウイルスの感染が拡大した 2020 年に再び拡大しました。これは感染拡大で世界的に消費が落ち込む中、米国政府が国債発行を積極化させ、調達資金を消費の後押しに充てて経済成長の下支えを図ったことによるものです。その結果米国経済は成長軌道にいったん回帰しましたが、2021 年以降、強く喚起された需要に加え供給制約による急速なインフレーションが発生し、経済成長を阻害してしまう懸念が高まっています。

今後、経済成長の減速が緩やかなソフトランディングにとどまるのかどうかは不透明です。ただ、過去を振り返っても、このような減速は経済成長の終焉を意味するのではなく、付加価値の成長に見合う水準までの調整後、世界経済は再び成長に向かうと考えられます。

このように、国際収支を確認することで、世界経済には安定したペースの成長が続く時期もあれば、一時的な過熱と急減速が生じる時期もあることがわかります。そのような世界経済の成長を取り込むためには、金融市場の短期的な変動に左右されない長期視点によるグローバル投資が最も適した運用手法であると考えます。