顧客ニーズに合わない、金融商品・サービスを問題視
まず金融庁が着目したのが、テーマ型や通貨選択型、毎月分配型などの投資信託でした。特にテーマ型の投資信託については、ここ数年だけでもヘルスケア、デジタル関連、足下ではESG関連と移り変わりが早いのが特徴です。人気のある時は概ね基準価額が堅調だとしても、ブームが過ぎると下がるおそれがあり、ロングセラー商品として定着しにくく手数料も高い傾向にあることから、個人の資産形成を担う中核的商品にはなりにくいという側面があります。
販売方法についても、比較的短期の値上がり期待を抱かせるような売り方をしていると、顧客も儲かっているかどうかに関心が向いてしまい、ライフプランを見据えた中長期的な資産形成を目指すべきはずが、長続きしない結果になりかねないと金融庁は指摘しています。実際、海外では、話題のテーマといっても運用実績のない新規設定の投資信託が、日本のように大量に売れることはないとも聞きます。
また、外貨建て保険については、低金利環境下の比較優位な商品として、一時期販売額が急増(最近もまた増加しているようですが)しましたが、それにともない苦情も増加しました。為替リスクに加え、投資期間が10 年以上の長期にわたる商品が多く、中途解約時に元本割れが生じる可能性が高い商品特性を持ちます。ただ、その商品特性を踏まえた適切な販売態勢が整備されないまま、顧客ニーズや適合性に合わない過度な販売が推進されている可能性があると指摘されました。
さらに、ここ数年で販売額が増加している商品に仕組債があります。販売会社は「高金利を求める一定の顧客層」のニーズに対応した商品と主張しているようですが、仕組債はデリバティブ(スワップ、オプション等)を内包した債券です。仕組みが極めて複雑で理解することが困難な商品であり、手数料が開示されていない中で実際には5~6%程度のコストが引かれていることから、仕組債はリスクに見合うリターンが得られない商品となっていることが多いと言えます。金融庁では「中長期的な資産形成を目指す一般的な顧客ニーズに即した商品としてはふさわしいものとは考えにくい」と問題視していますが、特定の商品を名指しして、ここまで強い表現を使うことは極めてまれなことです。