消費意欲の回復とともに現預金の残高の伸びは鈍化へ

ところで個人金融資産の総額の推移を見ると、2021年12月末に過去最高額を更新するところまで、四半期ごとの前年比伸び率が高かったことが分かります。2021年3月末に至っては7.9%の増加でした。

この背景にあるのは、株価の上昇による投資信託、株式等の評価額増加もありますが、同時に新型コロナウイルスの感染拡大と、それにともなって個人に支払われた給付金、助成金、補助金による影響もあったと考えられます。これらによって政府部門の現金・預金が家計部門の現金・預金に流入し、金融資産の総額を押し上げる結果につながりました。

とはいえ、2022年に入ってからは徐々に個人の行動制限が無くなりつつあり、消費意欲が戻り始めています。個人が消費を加速させれば、現金・預金の残高の伸びは今後、幾分か抑制されると考えられます。実際、現金・預金の前年比伸び率は、2021年3月末の5.7%増をピークにして徐々に低下傾向をたどっており、2022年6月末のそれは2.8%まで低下しました。

もちろんこれから先、株式市場が再び力強い上昇に転じれば、投資信託や株式等の評価額が回復して残高増となり、個人金融資産全体の額を押し上げることになるかも知れませんが、マーケットを取り巻く環境は決して良くはありません。世界的にインフレが加速しており、米国や欧州では長期金利に上昇圧力がかかっています。

また、ウクライナ情勢も不透明感を高めており、ロシアとウクライナを囲む欧州各国、ならびに台湾・中国情勢など日本を取り巻く周辺諸国で、地政学リスクが高まってきています。

こうした状況から考えると、株式市場は日本だけでなく、米国も含めて当面、厳しい状況が続くものと考えられます。そうである以上、投資信託や株式等の残高が回復する見通しは、いささか楽観的に過ぎるでしょう。3月末に比べて個人金融資産の残高はやや回復しましたが、ここから先、マーケットに対する信頼感が戻ってくるまでは、残高の過去最高額更新は難しいでしょう。