マーケットの逆風や金利上昇など、金融資産の伸びは鈍化傾向に

それと同時に、保険・年金・定型保険が538兆円もある点に注目しておきたいところです。ちなみに同項目のうち、保険の残高だけに限定した場合の残高は382兆円で、個人金融資産の19.0%を占めています。保険も、この超低金利下では運用商品として全く役に立たないといっても良いくらいですが、その残高は投資信託や株式をはるかに上回っています。運用商品どころか、保険という金融商品自体が果たして個人のライフプランにおいて、どこまで必要なのかという点が疑問視されるなか、それでも382兆円もの資金を集めているところが、個人の金融資産に対する考え方の歪んだ面なのかも知れません。

6月末は、2021年中を通じて前年比2ケタの伸び率を示していた投資信託と株式等が、前年比でマイナスに転じました。これはマーケットが下落したことによって、資金が流出しただけでなく、評価損が生じたからでしょう。

ちなみに投資信託協会が公表しているデータによると、2022年4月から6月までの3カ月間で、公募投資信託全体の資金増減額は2兆2978億3700万円の増加でしたが、運用増減額は8兆2429億6700万円の減少でした。それだけマーケットが逆風だったということです。資金循環統計の株式等の残高が前年比で3.3%の減少になったのも、この間の株価下落が大きく影響したものと思われます。

また個人金融資産で、昨年12月末から減少著しいのが債務証券です。2021年12月末が前年比で3.0%の減少、2022年3月末が同4.4%減少、そして2022年6月末が同5.8%減というように、時間を経るごとに減少幅が大きくなっています。

債務証券とは国債、財投債、地方債、政府関係機関債、金融債、事業債など、一般的に「債券」と呼ばれている金融商品の残高が示されています。そもそも家計部門における債務証券の保有額が占める割合は1.3%なので、微々たるものですが、恐らく6月末の5.8%減は、長期金利の上昇によって債券の時価が値下がりした分が反映されたものと考えられます。