わからないことは徹底的に聞く

正直、何がなんだか全くわかりませんでした。「マイナスですがプラスです」では、評価のしようもありません。今後どう対応したらいいのか判断がつきませんでした。

泣きついた先が、基金が契約しているコンサルタントでした。年金資産運用の「基礎の基礎」を相対で講義してもらいました。しかし、その時は分かった気になりますが、一晩寝るとすっかり忘れています。

では、どうしたか。資料に出てくる専門用語をググり、それでも分からない場合はコンサルタントに徹底的にメールし、面談やオンラインでも聞きました。1日に数回メールしたことも。信託銀行や投資会社が開くセミナーや、企業年金同士の集まりにも参加するなど徹底的にインプットを増やしていきました。

半年もするころには、各ファンド担当者の「顔と名前」が一致するようになりました。また、基金の置かれた状況と今後の見通しからすると、ポートフォリオの見直しが必要ではないか、と思うようになってきたのです。

そこで、自分なりに考えたファンドの新規購入や解約の原案を作成。コンサルタントと相談して作り上げたプランをもとに、買い付けや解約に着手したところで2020年初春、コロナ禍が襲ってきました。

2月~3月には株だけでなく債券など多くの資産価格が軒並み下落しました。当時、基金が保有していたヘッジファンドの1つは、約5億円だったのが1カ月で3億円台に。「こんな下落時に新規購入してもいいのだろうか」と不安が募りました。

そんな時、「一喜一憂は禁物。御基金は多くのファンドに分散投資しているから大丈夫ですよ」とコンサルタント。結局、3月末はわずかにマイナスに転じましたが、その後は米国などの大幅な金融緩和などにも助けられて、2020年度は大幅なプラス運用。2021年度もプラスで、基金の資産残高は直近で約900億円です。コロナ禍をはさんだ3年間で相当でこぼこはありましたが、トータルで80億円増えたことになります。

下落時にも我慢できた理由

コロナショックの時だけでなく、毎月の運用報告でも、数字の上下に一喜一憂することはありました。でも、我慢しました。我慢できたのは、セミナーや新聞、テレビ、インターネットなどで得た情報を自分なりに整理し、理解するよう努めたこと。なにより大きかったのは、信頼できるコンサルタントの存在でした。

巨額の「虎の子」を預かる企業年金基金として、「長期分散投資」のフォーマットは出来上がっています。「一喜一憂してはいけない」という長期投資の哲学のイロハも分かっています。

でも、それをコロナ禍や2008年のリーマン・ショックなど激動のタイミングでも右往左往せず、どっしり構えていられるか。

パニックの時こそ、冷静に判断し我慢する。そのための「よすが」は、自分にとって何か。平時に考えてみることが大事だと思います。