「Finasee」をお読みの皆さん、初めまして。阿部圭介と申します。2022年3月末まで、朝日新聞企業年金基金で資産運用を担当しておりました。現在は、主に企業年金を題材にウェブサイトなどで記事を書いています。

企業年金基金は、投資の世界では「機関投資家」と呼ばれています。生命保険会社、銀行、農協などと同様に「大量の資金を使って株式や債券で運用を行う大口投資家」です。

一方、Finaseeの読者の方々は基本的に個人投資家ですよね。「なぜ大口投資家だった人間の寄稿がFinaseeに掲載されるの?」という疑問が当然浮かんでくると思います。その答えは、このコラムのタイトルと初回のテーマにあります。

年金資産は「虎の子」

「一喜一憂しない」
「長期分散投資」

企業年金の資産運用の要諦や方法論はいくつもあります。でも煎じ詰めると、この2つに集約されると思います。「一喜一憂しない」は「我慢する」と言い換えてもいいかもしれません。

個人投資家の皆さん、とりわけ「虎の子」の資産を長きにわたって安定的に運用し、積み上げていこうとお考えの方たちにも、きっと大事な心構えになる。そう思います。

というのも、企業年金は退職金の一部(といっても相当な割合です)が運用資産の元手となっています。つまり、その会社の社員や退職者の「虎の子」を数十年、今後を考えると100年を超えるスパンで大事に育て、お返ししていく仕組みです。

「機関」と「個人」という違いはあるものの、両者には、基盤に置くべき考え方や哲学に共通する要素があると思います。企業年金の運用から見える景色をお見せすることで、多少は皆さんのお役に立てたらいいなと感じています。