商品設計上、仕組債は購入者が不利になりやすい側面も

もっと言うと、セールスしている人たち自身が、どこまで仕組債の商品内容を理解して販売しているのかも疑問です。正直なところ、前出のような商品内容を口頭で説明されたとしても、すぐに理解できる人は少ないでしょう。下手をすると商品内容を理解しないまま、リスクについて十分な説明をすることもなく、「日経平均株価が2万2000円にタッチしない限り年5%の利子が得られる高利回り商品」という部分だけを強調して販売している恐れも、全く無いとは言い切れません。

仕組債には商品設計上、大きな問題があります。それは、どう考えても購入者にとって不利なスキームになっていることです。

前出の事例で言うと、年5%の利子が得られるのは良いのですが、日経平均株価が2万2000円をタッチした時点で、18.5%の損失を被ることになります。もちろん日経平均株価が2万2000円まで下落しなければ、年5%の利子を3年にわたって得られますが、3年もの間、日経平均株価が一度も2万2000円まで値下がりすることがないなどとは、誰も断言できないでしょう。つまり、リスクに見合ったリターンが得られないのです。

しかも、「資産運用高度化プログレスレポート2022」によると、EB債をはじめとする仕組債の実質コストは、金融庁の業界ヒアリングや公開情報から推計すると、投資元本に対して年平均8~10%とされています。

つまり販売金融機関や、仕組債を組成しているアレンジャーからすると、収益的に極めて魅力的な商品、ということになりますが、それをセールスされ、購入した側からすれば、リスクに見合ったリターンが得られない、非常にアンバランスな投資対象といえるのです。

「販売金融機関が仕組債のリスクをしっかり顧客に説明し、理解してもらったうえで販売しなければならない」という意見はもっともですが、恐らくそうしたら、仕組債を買う人はほとんどいないでしょう。そのくらい、リスクに見合わない商品だということです。

だから、仕組債を販売する以上、販売金融機関はそこまで商品のリスク説明をすることはないでしょうし、もしそこまでしっかりリスク説明するようになった時は、それこそ仕組債は売れなくなり、商品そのものがこの世から消えることになるでしょう。