増加の一途をたどる仕組債の苦情と損害賠償請求

この手の仕組債は、今を遡ること20年ほど前から個人向けに販売されるようになったものの、株価の下落などで大損をする個人が続出した結果、一時的には下火になっていました。それがここ数年、証券会社だけでなく地方銀行なども販売戦線に加わり、積極的に販売されるようになってきたのです。

いささか古いデータで恐縮ですが、金融庁が昨年12月6日に公表した第13回金融審議会市場制度ワーキンググループの事務局説明資料によると、仕組債の販売が増加する一方、苦情も増えていることが指摘されています。

ちなみに、仕組債の販売額ですが、2020年度で4.3兆円あり、商品の性質上、当然のことながら証券会社が2.5兆円で断トツのトップ。ただ、販売額の伸びを比較すると、地域銀行のそれが2016年度の0.3兆円から、2020年度には2.3倍の0.7兆円まで増えており、証券会社や主要行に比べて積極的な販売姿勢であることが伺われます。

また、それと同時に苦情や損害賠償請求も増えています。株式や債券、投資信託、FXなどのトラブル相談窓口である「証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)」によると、2020年4月から2021年3月までに損害賠償請求された仕組債の金額は、合計12億7324万円であり、同期間中に報告された紛争解決手続きは152件で、そのうち70件が仕組債によるものと公表されています。

なぜ仕組債を買う人が後を絶たないのでしょうか。それは簡単に理解できない複雑な仕組みであるのと同時に、表面上の利率がとても魅力的に見えるからでしょう。
前出の仕組債の事例はあくまでも架空のモデルですが、今のような超低金利時に年8%という利率を提示されたりしたら、心が動く人もいるはずです。

しかも、仲介・紹介販売ベースとはいえ、地域銀行のような地元密着型の金融機関がセールスすれば、「マーケットの動向次第で元本が大幅に目減りするリスクのある商品を販売するはずがない」と信じている人たちの財布を開かせるのは、案外容易なのかも知れません。