既存の債券と全く異なるリスク・リターン特性を持つ「仕組債」
金融庁と証券取引等監視委員会が、メガバンクや地域金融機関、証券会社などを対象にして、仕組債の販売実態を総点検することになりました。
仕組債は「債券」の一種ですが、一般的に言われている債券とは全く異なるリスク・リターン特性を持っています。一般的に言われている債券は、発行体が元本を保証しており、償還まで保有すれば、その間に利子収入を定期的に受け取れるほか、償還日には額面価格に応じて償還金が支払われます。償還日前に債券市場で売却しない限り、基本的には元本割れリスクを気にすることなく運用できるので、金融商品のなかで、最も安全度の高いものと受け止められています。
この債券に株価指数オプション取引などのデリバティブ(金融派生商品)を組み合わせて、債券とは全く異なるリスク・リターン特性を持たせたのが、「仕組債」です。
典型的な事例を挙げると、以下のようになります。
・参考指数・・・・・・日経225平均株価
・発行日・・・・・・2022年9月1日(日経平均株価=2万7000円)
・償還日・・・・・・2025年9月1日
・ノックイン判定水準・・・・・・2万2000円
・最終評価日・・・・・・2025年8月20日
・観察期間・・・・・・2022年9月2日~最終評価日
上記が何を意味するのかというと、この仕組債は日経225平均株価を参考指標とし、観察期間である2022年9月2日から最終評価日である2025年8月30日までの約3年間のなかで、日経平均株価があらかじめ定められた水準であるノックイン判定水準である2万2000円を割り込むかどうかを常時監視します。
そして、2万7000円でスタートした日経225平均株価が、2025年8月20日までの間に、一度も2万2000円を割り込まなければ、年5%の利回りと元本保証が実現しますが、一度でも2万2000円を割り込んだら、年5%の利子が得られないだけでなく、債券の元本価格が、株価の下落率に応じて減額され、その時点で償還されます。
たとえば、同仕組債の発行が2022年9月1日で、この時の日経225平均株価が2万7000円だったとします。そして、この時の仕組債の価格が100円だとしましょう。その後、日経平均株価が2万2000円まで下落したら、18.5%の下落なので、それに応じて債券価格も18.5%減額され、81.5円で償還されます。あくまでも架空の事例ですが、これがよくある仕組債の基本的なスキームです。