約束の日時に、石井家に訪問

約束の日時に伺った石井家は、交通至便な住宅街にありました。庭の手入れが行き届き、古めの建物の長い縁側が昭和の面影を感じさせます。玄関で出迎えてくれた頼子さんは、身ぎれいで活発な雰囲気の老婦人でした。投資好きということで、頭の回転の速い人のようです。

「青山さんからお話を聞いて、ぜひ相談したいと思いまして。私が投資好きなのでうちには銀行や証券会社の営業マンはよく来るけど、売る立場の人の話ばかり聞いていると結局何か買わされてしまうんですよ」

とユーモアを交えて語る頼子さんには老老介護の悲壮感はほとんど感じられません。

「主人が寝たきりになって8年経ちます。少しずつ衰えが進んで、今は意思疎通も難しくなりました。この状態なら施設に預けたほうが私も負担が減るし安心なのですが、介護が始まったときから、主人が『施設には絶対に入りたくない』と言っていたので。そこで私も共倒れになりたくないので、ヘルパーさんの力を借りることにしました。今は朝昼晩と1日3回ヘルパーさんに来てもらっています」