長年ネット証券に身を置きながら、こんなことを言うのは自分でも違和感があるが、最近はネットの世界の「拡散力」につくづく驚いている。「老後資金2000万円問題」や新型コロナウイルスのまん延など、さまざまな要因が重なったとはいえ、SNSやYouTubeの後押しによって、つみたてNISAと、つみたてNISAの中で積み立てるインデックスファンドが資産形成の手段として市民権を得たことは間違いない。
そのネットの世界で昨年以降、じわりじわりと認知されるようになったのが、レバレッジ型の投資信託だ。
きっかけは昨年、SNS界隈でNASDAQ100指数のレバレッジ型投信が、「レバナス」の通称で広く「拡散」されたことにある。ネット証券では以前から日本株を対象としたブル・ベア型投信が一定の投資家層に人気で、マーケットのボラティリティが高まると活発に取引される傾向があった一方、約3年前までは買付手数料がかかっていたことに加え、積立の対象外銘柄ということもあり、幅広い投資家に利用されているとは言い難かった。それが、右肩上がりで上昇するナスダック市場の強力な後押しもあって、NASDAQ100指数のレバレッジ型がピンポイントで注目されたというわけだ。
しかし、筆者は今もなお、このブームにどこか居心地の悪さを覚えている。
相場環境に応じた迅速な投資判断が求められる
まずはここで、レバレッジ型投資信託の商品性について確認しておこう。
レバレッジ型とは、商品先物取引などを活用し、レバレッジ(てこの原理)を利かせ、投資資金の何倍もの投資効果を追求する投資信託を指す。この倍率は商品によって異なるが、近年増えている海外の株価指数を対象としたレバレッジ型の場合、2倍から3倍で設計されているものが主流になっている。日々の基準価額の値動きが、連動を目指す指数の値動きの2倍から3倍になるよう運用がなされるため、基準価額の値動きが荒く、リスクが高い。一般的に投資信託では中長期投資が推奨されるが、レバレッジ型は相場環境に応じた迅速な投資判断が求められる、数少ない投資信託でもある。
「レバナス」は元々、大和アセットマネジメントが2018年10月に設定した「iFreeレバレッジ NASDAQ100」を指す通称として、先述した通りネットの世界で広まった。その後、2021年11月には楽天投信投資顧問が「楽天レバレッジNASDAQ-100」の運用を開始。当ファンドの正式な愛称が「レバナス」のため、ネットの世界で「レバナス」といえば、現在は主にこの2ファンドのことを指す。
「レバナス」が従来の日本株ブル・ベア型と異なるのは、積立に対応しているという点だ。理論上、価格変動が大きいほうが積立効果を期待しやすいので、レバレッジ型投信で積立を行うこと自体を真正面から否定するつもりはない。しかし、若年層に広くレバレッジ型投信の長期積立を促してもよいかというと、それは少し違うのではないか。レバレッジは、必ずしもすべての投資家が自発的に取りに行くべきリスクではない。冒頭で触れた、筆者が覚える居心地の悪さは、まさにこの点にある。