「これでは、とても足りない…」。深くため息をつくのは、都内在住の佐藤奈々子さん(仮名・当時37歳)。仕事は楽しい、趣味は充実している。ダイエットもそれなりで健康に問題はない。いわゆる「おひとり様」を満喫するアラフォー世代だ。企画制作会社に勤め、収入は特に高いわけではないが、専門職のため30代の平均年収は超えている。しかし、将来の年金額や老後資金を考えてみると、不安が残る。このままでいいのだろうか…。
今のところ、結婚をする予定はない。もっとも、結婚したとしても、今は共働きが前提。夫の経済力など、あてにはできない時代だ。
「やはり投資をしたほうがいいかもしれない」。モニターに映るネット記事に「老後は2000万円必要」という見出しが書かれているのを、佐藤さんは切迫感を抱えて見つめていた。
自分でやるしかない! アラフォー女性が目覚めた投資の世界
佐藤さんはバブル崩壊後の就職氷河期から、さらに5年ほどあとに新卒を迎えた世代だ。まだ企業が新卒採用をかなり絞っており、奈々子さんも就活では苦戦を強いられた。最初に小さな会社に入り、何度かの転職でスキルアップをはかった。業界自体の規模が小さいため、確定年金制度や確定拠出年金制度のある会社に勤務したことはない。
会社の制度には頼れない、しかし公的年金だけではとても足りない。佐藤さんはいずれの会社でも正規雇用で働いており、厚生年金は積み上げているが、前の世代ほど年金額は多くない。また、現在勤務している会社には退職金もないため、老後資金は自分で用意しなければならない。
たまたまマネー関係の仕事を担当し、「投資はやったほうがいいな」と感じて、早速ネット証券会社に口座を開設。しかし、この頃には放置したまま1年半が過ぎようとしていた。
一方で、実業家が発信するYouTubeの情報で、日ごろからビジネススキルを学んでいた佐藤さん。ある日、実業家のひとことにハッとさせられた。
「これからの時代は毎月5万、10万は貯金や投資をしないと、スタート地点にも立てない」。
過激な言葉だが、一理あると思った。自分たちの世代は、新卒時の給与を低く抑えられ、国や社会に期待できない。「いよいよやるしかないかも」。2020年の年明けに、気持ちも新たに投資をスタートすることにした。