インフレ・ヘッジは世代ごとに異なる対応が必要

とは言え、若い時であれば、株式は短期的にはインフレに対応できないものの、最終的には高いリターンを得る可能性がありますから、長期でみて株式で十分かもしれません。一方、投資期間が短くなり、引き出し局面に入っている退職後では、株式だけにインフレ・ヘッジを頼るのは危険と言えるでしょう。つまり、年齢に合ったインフレ・ヘッジのやり方があるのです。

ここで、各世代が意識しなければならないリスクについてまとめると、若年世代(~45歳)は成長リスク、つまり十分にお金が増えないリスクを考えるべきであり、ミドル世代(45~64歳)になると変動性も抑えなければならないため、成長リスクに加えて市場リスクも考慮する必要があります。退職後世代(65~79歳)やシニア世代(80歳~)は、資産の引き出し局面となるため、インフレ・リスクと長生きリスクが主なリスクとなります。

特にシニア世代において、インフレは優先順位の高いリスクと言えます。なぜなら、この世代には長期の投資期間が残されておらず、すでに引き出し局面に入っていることもあり、たとえ短期的であっても株式や債券で大きなマイナスを被ることは避けたいからです。

そこで必要になるのが、不動産関連株式(REIT等)、資源関連株式、インフレ対応株式、コモディティ先物、金、インフレ連動債などの資産です(詳細はこの連載の第11回「あなたの資産は大丈夫? 危機で高まるインフレリスクにどう備えるか」をご参照ください)。インフレ・ヘッジが加入者に転嫁されているDCでは、今後を見据えて、これらインフレ対応が可能な運用商品をラインアップに入れることが求められると思います。そうなるように、ぜひ加入者の皆さんから会社に声をあげてみてください。

一方、このような運用商品を会社が用意したとしても、加入者が適切に活用するのは難しいかもしれません。そこで、株式、債券という伝統的資産のみならず、インフレ対応が可能な資産にも分散投資する「インフレ対応バランス型投信」をラインアップに加えたり、それを指定運用方法としたりするのも一案ではないかと思います。インフレ・ヘッジの必要性は理解できても、適切に対応できない加入者は多いはずで、そのような人には、このようなパッケージされた商品も必要でしょう。

今後の最大の課題であるインフレに対応するために、加入者個人はもちろん、会社にも対応をお願いできたらと思います。