銀行ビジネスと収益構造を財務諸表で解説
このように書くと、「銀行預金に預けても受け取れる利息は微々たるものなのに、払う手数料ばかりが高くてけしからん」という話になりがちですが、そういう話ではありません。
ATMを利用したり、各種送金などをしたりすれば、当然のことですがそこには人の手間だけでなく、稼働させなければならないシステムなどもあるので、それらのコストがかかります。近年、銀行間送金手数料が40年以上変わらないということで、公正取引委員会が銀行業界に実質的な引き下げを求める報告書を公表した結果、送金手数料を見直す動きもありますが、銀行はあくまでも営利企業ですから、自分たちの作業に対して規定の手数料を受け取るのは当然のことです。
ちなみに、これら銀行が役務を提供することによって得られる手数料は、銀行の損益計算書の「役務取引等収益」に計上されていますが、この大手地方銀行の2022年3月期決算における金額を見ると、686億7100万円になります。
さて、この地方銀行の損益計算書を、もっと詳しく見ていきましょう。銀行が、預金で集めたお金を貸し出すことによって金利収入を得る貸出業務や、前述のさまざまな役務提供によって得られる収益は、銀行の損益計算書上、「経常収益」の項目に計上されます。その額は2869億7900万円です。
この経常収益のうち、最大の稼ぎ頭は「貸出金利息」、つまり、預金で集めたお金を貸し出すことによって得られる金利収入です。その額、1412億4600万円。今も銀行の収益は、預金で集めたお金を貸し出すことによって得られる金利収入であることが、この数字からもお分かりいただけるのではないでしょうか。
銀行に限らず他の業態でもそうですが、企業にとっての利益は、収益から費用を差し引いた分になります。預金は、私たち預金者からすれば運用に当たりますが、銀行からすれば資金調達手段です。つまり預金の利息は、銀行から見れば資金調達コスト、つまり費用に該当します。
銀行が経営をするうえで必要な費用は、「経常費用」に計上されます。その額は2047億2200万円です。単純に言えば、2047億2200万円の費用をかけてビジネスを回した結果、この大手地方銀行は2869億7900万円の収益を稼ぎ出し、その差額である822億5700万円の利益を生んだことになります。そして、このビジネスモデルの中核にあるのが、預金を集めて貸し出すという預貸ビジネスです。この預貸ビジネスを損益計算書から見ると、今の低金利の実態がよく理解できます。