走行時だけでは測れない「LCA」という広い視点

走行時だけでなく「LCA」視点で見た場合、決してEVだけが環境に良いとは言えないというのだ。LCAとはライフ・サイクル・アセスメントの略称で、クルマのライフサイクルの各段階(原料調達・製造・使用・リサイクル・廃棄)における環境影響を定量的に評価する手法だ。国内の大手自動車メーカーが加盟する日本自動車工業会の資料によると、LCA全体でCO2排出量を見たときに、EVは28トン(車両製造で13トン、エネルギー製造で15トン)だという。一方、HV車も28トン(車両製造:7トン、エネルギー製造:3トン、走行時:18トン)とほぼ同等だ。さらに排出量が最も少ないのはPHV車で24.5トン(車両製造:7トン、エネルギー製造:10トン、走行時:7トン)となっている。エネルギー製造部分は電力の再エネ状況などによって変動するとし、特に再生可能エネルギー比率が低い日本では決してEVだけが環境に優しいというわけではなさそうだ。

脱炭素化という大きな課題に対して自動車に焦点を当てた時に走行時だけでなく、さらには自動車業界だけでないLCA全体、社会全体の問題として捉える必要がある。そうすることにより、将来、様々な角度からCO2削減は進んでいくだろう。投資も必要になってくるが、脱炭素化に挑むESG(環境・社会・統治)経営を行う企業へは、ESG投資マネーが注入されやすくなる。そのESG投資マネーを活用して自動車メーカーとしての最大のアプトプットである良質なクルマが量産される。技術革新も進み、そのような好循環が生まれれば、環境面でも優れ、家計にも優しいクルマが手に入るかもしれない。

執筆/鎌田 正雄
合同会社ユニークアイズ代表。大手産業総合紙で記者経験を積み、主に自動車業界や中小企業など製造業の取材に従事し、2021年に独立。「ものづくりのまち」で有名な東京都大田区生まれで町工場の息子。はやりのポイ活で集めたポイントを原資に少額ながら超低リスク投資を始めた