年金記録の解明に向けて

結婚で名字が変わったり、氏名の読み方が複数あったり、転職が多かったりする人に記録の誤り、漏れが多かったのですが、こうした年金記録問題の解決に向けて国は動き出すことになります。

2007年12月から2008年10月にかけて、記録漏れの可能性が高い人から順次、「ねんきん特別便」を送り、記録の確認を進めることになりました。そして、その後、毎年誕生月(1日生まれの場合はその前月)に「ねんきん定期便」を被保険者に送付し、被保険者は加入記録や将来の年金給付についての情報提供を受けつつ、記録の誤りや漏れがないかを確認することができるようになりました。

もし誤り・漏れがあれば、「年金加入記録回答票」を記入して送る、社会保険事務所(2010年以降は年金事務所)に行って記録調査をしてもらうなどの対策が用意されました。基礎年金番号へ未統合であった自身の記録が見つかった場合は基礎年金番号への統合がされ、自身の記録として追加されることになります。こうした取り組みを続けた結果、これまでに約5095万件のうち約3301万件の記録が解明されています(日本年金機構「アニュアルレポート2020」より)。

また2007年6月に、年金記録の訂正について国民の立場に立って公正な判断を行うため、総務省に年金記録確認第三者委員会が設置されました。第三者委員会は、弁護士、社会保険労務士などで構成され、厚生労働省に年金記録がなく、記録についての物的な証拠がなくても、本人の申立てや関連する資料を基に公正に記録訂正の判断を行うこととなっていました。8年間活動した第三者委員会は2015年6月末で廃止され、その後の訂正請求に関する業務については厚生労働省に移管されていますが、第三者委員会への記録訂正の申立て約30万件のうち、約27万件が処理され、約15万件の記録を回復することができました(年金記録確認第三者委員会「年金記録確認第三者委員会実績報告書(概要)」より)。

以上のように、年金記録問題以降、ここ15年間の間に「受け取れるはずの年金を受け取れるようにする」ための取り組みが行われてきました。