唯一TOP20入りした“市”とは?

令和4年の地価公示価格において、東京都分の地点数は住宅地・商業地合わせて2602地点あります。そこから区市町村別に算出された住宅地平均価格表を見てみると、TOP20は以下の20の区市。

 

単位:円/㎡
出所:東京都財務局「令和4年地価公示価格(東京都分)」

東京都全域の平均は43万7700円/㎡でした。

都心6区と言われる千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区、文京区のうち、新宿区以外がTOP5を占めています。特にTOP3には都心3区と言われる3区のうちの2区である千代田区、港区が1位2位と並ぶ、“納得”の結果に。また、1位千代田区と10位豊島区には約4倍、20位板橋区とは約6倍もの差があり、都心の圧倒的な強さがうかがえます。

ちなみに、その他の都市の住宅地の平均値は、例えば大阪市が24万9300円/㎡、横浜市は23万4100円/㎡、名古屋市19万2600円/㎡という結果です。1位千代田区と20位板橋区に約6倍もの差があるといっても、そもそも東京のTOP20に入るような区市の地価は日本でひときわ高いという現実もあります。

再び、TOP20のラインナップを見てみましょう。東京には、都心3区や6区を取り囲むような位置関係で23区があります。そのため単純に考えれば、TOP20には23区が並びそうなものですが、結果はそうではありません。

13位に武蔵野市が入っているのです。

その要因で大きいのは、やはり吉祥寺を擁することでしょう。吉祥寺は「住みたい街ランキング」でも首位や上位の常連として知られ、もはやブランド化している“憧れの街”の1つです。

 

渋谷、新宿といった巨大ターミナル駅からは若干、距離があるものの、京王井の頭線の始発駅で、JR中央線の主要駅でもあるため渋谷や新宿へのアクセスは抜群。加えて駅から徒歩数分のところに井の頭公園があるなど、利便性と環境の良さのバランスが取れていて、その希少性から多くの支持を得ているようです。

では、もし吉祥寺で戸建てのマイホームを建てるための土地を手に入れるとしたら、いくらかかるのでしょう。

実際は実勢価格で取引するものの、せっかくなのでこの公示価格を使って計算してみましょう。

首都圏の住宅の敷地面積の中央値は、住宅金融支援機構『2020年度フラット35利用者調査』によれば168.7㎡

※土地を買って、家を建てるという条件のため注文住宅融資利用者のデータを使用。

武蔵野市の中からさらに吉祥寺エリアに絞った標準地で、最も安いのは「吉祥寺東町2丁目503番85」ですが、それでも58万円/㎡です。168.7㎡ならば9700万円を超え、土地だけで1億円近い価格になります。一般に実勢価格は公示価格よりも高くなる傾向にありますから、それ以上という可能性もあり……。「“憧れの街”に住まう」のは実に高くつくのです。

●上昇率に着目するとまた違った姿が…… 地価上昇率の高い多摩地区の“市”とは!? 後編に続く>>