複雑な仕組みを持つEB債でも利益相反になりやすい

仕組債のようにブラックボックスが多い金融商品も、利益相反が起こりやすいと考えるべきでしょう。かつてEB債(他社株転換可能債)で、利益相反ともいうべき問題が生じました。

EB債とは、事前に決められた転換対象株式の株価水準が、利率判定期間中に、あらかじめ決められた水準を上回っているか、下回っているかによって、高い利率が得られたり、大きく値下がりした転換対象株式が償還金代わりに引き渡されたりします。転換対象株式の株価が値上がりすれば年7%、9%という高い利子を受け取れる反面、転換対象株式の株価がEB債の発行時点の株価(当初株価)に比べて、たとえば30%値下がりしたら、その値下がりした転換対象株式が償還金代わりに、EB債の購入者に引き渡されるのです。

EB債を発行して資金を調達した発行体としては、高い金利を払いたくないので、転換対象株式の株価が利率判定期間中に大幅に値下がりして欲しいと考えます。逆に、このEB債を購入している投資家からすれば、高い利子を受け取りたいので、転換対象株式の株価が一定水準を維持して欲しいと考えます。つまり、EB債の発行体と投資家との利害が完全に対立する構図になるのです。

EB債を発行するにあたっては、間にアレンジャー(EB債を組成する金融機関)が入るわけですが、アレンジャーからすれば、発行体はEB債の発行に際して結構な額の手数料を落としてくれる上顧客です。当然、発行体と投資家のどちらの味方かといえば、発行体です。そこでアレンジャーが、利率判定期間中に転換対象株式の売り注文を大量に出して、株式で償還される水準まで株価を押し下げるのです。

このように複雑な仕組みを持つ金融商品は、一般の個人にとっては分かりにくい部分が非常に大きいだけに、利益相反が起こりやすいとも言えます。個人が資産運用を行うにあたって、利益相反で損をしないためには、金融機関の窓口担当者が勧めてきた金融商品には、先方の売りたい意向があると考えること。そして、複雑な仕組みの金融商品には手を出さないことが肝心です。