相談時に利益相反になりやすい売り手と買い手の関係性

たとえばあなたが資産運用を始めるにあたって、証券会社のどこかの支店の窓口に行ったとしましょう。なにぶんにも初めての投資になるので、何を買えば良いのか分からず、「初めて投資をするのですが、何を買ったらいいのでしょうか」と素直に聞いたとします。

本来、そのような相談を受けた場合、窓口の人はあなたの利益を実現するために最大限の努力をするべきです。例えばその時の最も合理的な判断としては、年間の信託報酬率が0.2%という、ローコストな米国株インデックスファンドを購入してもらうことだとします。

ところが、窓口でお客様にさまざまな投資信託を販売しなければならないその担当者には、結構しんどい営業ノルマが課せられていたらどうでしょうか。実は、米国株式を組み入れて運用するアクティブ型ファンドの営業ノルマが、まだあと500万円ほど足りておらず、この投資信託の信託報酬率は年2.0%と高めです。

さて、この場合、この窓口担当者はどちらの投資信託を勧めるでしょうか。お客様のためを考えれば、信託報酬率が年0.2%の米国株インデックスファンドであるのは明らかですが、この窓口担当者は自分自身のノルマを達成するため、信託報酬率が年2.0%の米国株アクティブファンドを勧め、実際に買ってもらいました。しかも、米国株インデックスファンドについては説明すらしませんでした。

これでは、明らかな利益相反行為になります。もちろんそのお客様が米国株インデックスファンドの存在を知っていて、比較考慮の末に米国株アクティブファンドを選んだというのであれば、お客様の判断を優先するべきですが、お客様にとって有利な選択肢であるはずの米国株インデックスファンドの存在を隠して、自分の営業ノルマを消化でき、かつより高い信託報酬を受け取れる米国株アクティブファンドを買わせていたのだとしたら、この窓口担当者の利益とお客様の利益は、完全にぶつかることになります。

結局、何が言いたいのかというと、金融機関の窓口で金融商品を購入する場合は常に、利益相反に直面するリスクがあることを認識していただきたいのです。この点を重々、理解したうえで金融機関の店頭に行かないと、最終的には金融機関の営業担当者のいいようにされてしまう恐れがあります。

金融機関で働く人たちの常識からすれば、10万円でも、1万円でも営業ノルマを消化することを優先させるべきかも知れませんが、その結果、より高いコストを払わざるを得ない投資信託を買わされたお客様からすれば、「客である自分よりも、金融機関の利益を優先させた」という認識になります。