日本株の約6~7割を動かすとも言われる外国人投資家。積極的な言動によって、存在感は日に日に増しています。

彼らはどんな視点で企業を選び、投資をするのでしょうか。その思考がわからなければ、個人投資家も翻弄されてしまうかもしれません。

長年にわたり外国人投資家の動向を分析してきたみずほ証券エクイティ調査部チーフ株式ストラテジストの菊地正俊氏の新著『外国人投資家の思考法と儲け方』から、注目を集まる「アクティビスト」に焦点を当てて紹介します。(全3回の3回目)

●第2回:なぜ同じ企業が次々と狙われるのか…アクティビストに“選ばれる”日本企業の実態

※本稿は、菊地正俊著『外国人投資家の思考法と儲け方』(日本実業出版社)の一部を抜粋・再編集したものです。

アクティビストが注目する親子上場

親子上場については、投資家から「親会社の利益が優先され、子会社の少数株主の利益が損なわれる」との懸念が持たれることが多くあります。東証は親子上場会社に対して情報開示の強化を求めていますが、プライム市場には日本郵政グループに加えて、ソフトバンクグループや楽天グループなどが親子上場しており、東証は親子上場に対して厳格な姿勢を見せていません。

東証は2025年2月に、「親子上場等に関する投資者の目線」を発表しました。機関投資家も上場子会社に対して過半数の独立社外取締役の選任を求めますが、機関投資家の厳格な議決権行使も親会社が50%以上の株式を保有する状況では効果が乏しくなっています。2024年4~6月株主総会では、イオン系の上場子会社で運用会社の反対が高かったですが、イオンは親子上場を解消する素振りを見せていません。親子上場の解消の発表は緩やかなペースにとどまっています。

親子上場問題には、様々なアクティビストが介入してきた歴史があります。親子上場の解消に成功したのは、古くはエフィッシモキャピタルが2008年に投資した大和紡績(現ダイワボウHD)とダイワボウ情報システムズ、ストラテジックキャピタルが株主提案を行なって、凸版印刷(現TOPPAN HD)が2019年に完全子会社化した図書印刷など限られています。

凸版印刷は2022年にはトッパン・フォームズも完全子会社化したため、上場子会社がなくなりました。ダイワボウHDはダイワボウ情報システムズを完全子会社化した後、繊維事業からEXITして立派なIT企業に変貌しましたが、エフィッシモキャピタルの介入がなければ、ダイワボウHDはいまも繊維事業を営むコングロマリットだったかもしれません。ストラテジックキャピタルは2匹目のドジョウを狙って2020年に東レとその上場子会社の蝶理の両方に株主提案を行なって否決されて、蝶理はいまも東レの上場子会社のままです。