ロシア債券を組み入れる国内投資信託の純資産額80億円に影響が

個人でロシア国債を直接買い付けているケースはほぼないと思われますが、間接的には投資信託を通じて保有しているケースがあります。たとえばドイチェ・アセット・マネジメントが設定・運用している「DWSロシア・ルーブル債券投信(毎月分配型)」には、2月28日時点で国債が67.6%、準国債が31.0%組み入れられています。この準国債とは、国(ロシア)が50%以上の株式を保有し、企業が発行している債券のことです。これでロシア国債がデフォルトになったら、ロシア国債などに投資する投資信託の組入資産がほぼ無価値になりますから、今後、投資信託の運用そのものが立ち行かなくなります。

1月末時点で、ロシア国債をはじめとするロシアの債券を組み入れて運用している投資信託は、大和アセットマネジメントの「ロシア・ボンド・オープン(毎月決算型/年1回決算型)」、ドイチェ・アセット・マネジメントが前出のファンド以外に「DWSロシア・ルーブル債券投信(年2回分配型)」、三菱UFJ国際投信の「短期ロシアルーブル債オープン(毎月分配型)」があります。

三菱UFJ国際投信では、組入債券の市場における流動性が損なわれたことから、ファンド監査人と協議の結果、組入債券の評価価格をゼロにすることを決定しました。恐らく他のロシア国債を含むロシア債券に投資するファンドについても、同様の措置が今後、取られていくものと考えられます。

なお、ロシア債券に投資している投資信託の純資産総額は、上記のファンドをすべて合計すると、約80億4000万円(1月末)です。この資産価値がほぼゼロになるとしたら、そのインパクトは決して小さいとは言えません。

また、ロシア国債のデフォルトが生じた時、ルーブルの価値が今以上に下がるリスクも想定する必要があるでしょう。その点で言えば、ルーブル建て債券への影響も無視できません。

たとえば岡三証券は2019年6月3日~6月27日までの売出期間を設けて、「世界銀行ロシアルーブル建債券(サステナブル・デベロップメント・ボンド)~食品ロスと食品廃棄問題~」と称した債券を販売していました。利率は年6.14%で、償還日は2022年6月27日。世界銀行を発行体とする債券なので、格付はムーディーズが「Aaa」、スタンダード&プアーズが「AAA」、フィッチが「AAA」というように最上級格付けを取得しています。

恐らく、年6.14%という高い利率と、世界の名だたる格付会社から最上級格付けを取得していることの安心感、さらに言えば、SDGsという流行に乗った名目の債券ということで購入した個人も少なくないと思われます。

では、この債券が現状どうなっているのかを計算してみましょう。