高格付け債券でもデフォルトで価値は大幅減額へ

同債券の申し込み単位は額面5万ルーブル以上5万ルーブル単位となっています。2019年のルーブル/円レートは、年平均で1ルーブル=1.6844円でしたから、仮に50万ルーブル分を買い付けたとすると、円建ての購入金額は84万2200円です。

出典元:「世界経済のネタ帳」をグラフに加工(元データはIMF)
 

そして、2022年3月に入って、ルーブルは一時、1円を割り込み、0.9271円まで下落しました。この時のレートで換算すると、50万ルーブルは46万3550円になります。世界銀行という、非常に信用力のある金融機関が発行体となった債券でも、通貨が暴落すれば、価値は大幅に減額されてしまうのです。

出典元:ヤフーファイナンス(ウイークリーベース)のデータをグラフ化
 

ところで、掲載した上記2つのグラフは、ルーブル/円の為替レート推移です。敢えて1995年~2019年までの推移と、2020年~直近までの推移に分けました。

1995年~2019年までの推移は、ロシア国債が前回デフォルトとなった1998年の前後で、ルーブルの対円レートがどうなったのかを示すものです。デフォルト前は1ルーブル=21円前後だったのが、デフォルト後は2003年時点で3.7円台まで下落して一旦、底を打ちました。約7分の1です。

しかも、この時は金融システムリスクが世界中に波及することを恐れ、米国やIMFがロシアを支援しましたが、今回は全く事情が異なります。ロシアが国際経済・金融の枠組みから完全に排斥されたとなると、国際的な支援自体が期待できなくなります。そうなると、ロシア国債がデフォルトに陥った段階で、ルーブルの価値がさらに下落することも、十分に考えられるでしょう。

つまり発行体リスクがほとんどない、トリプルAの債券に投資したつもりでいたのに、通貨リスクによって資産価値が大幅に毀損する結果になるのです。この手の個人向けルーブル建て債券は他にも販売されていたので、かなり大きな被害になりそうです。