「おひとりさま」女性の葛藤に、現代日本の問題が込められている!?

例えば、鳴海が伯母の死に動揺し、急に婚活を始めた時。年下の同僚・ナスダくんは、「結婚すれば安心って昭和の発想でしょ」と鋭く切り込む。専業主婦がいる世帯と共働き世帯は、すでに2014年に逆転。子どものいる世帯でも、専業主婦率は27.6%(2019年、厚生労働省データ)と3割を切る。しかもこの数字を押し上げているのは世帯主の所得が高止まりしている40代後半から50代と推測されるので、若年世帯ではもっと専業率は少ないはずだ。「でも、子どもとか…」とつぶやく鳴海に、今の子どもたちは自分のことが精いっぱいで親の面倒を見る余裕などないのでは?とナスダくんは指摘する。

現実にこのナスダくんも、ほかの女性社員も、鳴海より年下の同僚たちはエリートやバリキャリでも奨学金を返済しながら働いている。現在、日本の約半数の大学生が奨学金の利用者。日本の場合は奨学金とは名ばかりで、実態は返済義務のある奨学ローンだ。さらに、給料は前の世代に比べて頭打ち。ナスダくんの言う通り、すでに今の50代、60代でも「子どもに面倒を見てもらう」なんて、夢物語なのだ。
※現在は給付型奨学金も整備されてきたが、民間の奨学金は入学後申請のものも多く、また最もメジャーな学生支援機構の奨学金は国立大学授業料全額免除(54万円支給、私大は差額の二分の一程度を補助)を受けられるのは住民税非課税世帯以下とかなり限定的。

鳴海の母が父と離婚したいと思っていることが発覚した回では「母が熟年離婚を考えてるみたい」という鳴海に、同僚の女性が「(専業主婦だった)お母さんが離婚しても金銭的にやっていけないですよ」と言い放つ。離婚による年金分割でもらえるのは厚生年金分の半額だけ。平成20年5月以降に離婚した第3号被保険者には年金分割が認められたが(この時は厚労省に問い合わせが殺到したという)、国民年金と合わせても家賃も払えるかどうかという金額のことも多い。シニア女性の自立は今でも難しい。

漫画の中では現在の日本人を取り巻くシビアな現実が、ビシバシと突き付けられる。ただ、コミカルな描写も多く、読んでいて重い気持ちにはならない。突き付けられる現実に、主人公が自分ツッコミしながら、前向きに取り組んでいく姿にも勇気づけられる。