〈前編のあらすじ〉

外資ソフトウェア会社に勤務する荒川裕子さん(当時42歳)は、高収入の独身キャリアウーマン。5000万円もの資産がありながら、証券会社の営業マンに勧められるままに回転売買を繰り返し、資産は全く増やせていないことに不満を募らせる。そんな時、ゴルフ練習場で出会った男性に一目ぼれ。彼に会うために毎週のように練習場に通い、ようやく彼と話をするチャンスが訪れた。なんとその男性は、資産運用のアドバイザーだという。彼女はあこがれの男性と、満足のいく資産運用という二つの幸せを手に入れることができるのか。

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「よかったら今度、私の事務所にいらっしゃいませんか。ここでもいいんですが、事務所なら資料やパソコンの画面で分かりやすく説明できるので」

彼が差し出した名刺には、IFAという肩書がありました。名前は藤崎達也さん(仮名)。IFAは“Independent Financial Advisor”の略で、「独立系ファイナンシャルアドバイザー」とも呼ばれる職業。個人投資家のサポートや資産形成のアドバイスをしていると説明してくれました。

「実は僕自身、前職は証券会社の営業だったんです。ノルマに追われてお客さんに無理なお願いばかりして、損をたくさんさせてしまった。こんな仕事を長く続けるよりも、本当にお客様の役に立てる仕事をしたいと思って転職したんです」

私は驚いて、でも彼のことをもっと知りたくて、転職のエピソードや今の仕事のことなど、質問攻めにしてしまいました。8歳も年下とわかったのは少しショックだったけれど、大手証券会社という条件の良い仕事を辞めてでも、顧客本位の仕事をしたいと決断したという彼の信条にほれ込んでしまい、絶対この人に相談に乗ってほしい、と思いました。

よく「物事が上手くいくときは“すんなり”といく」と言いますが、ゴルフ練習場のベンチで起きたこの出来事はまさにそれだったのだと今でも思います。すでに、今までの証券会社の営業マンとは何かが違う、と確信めいたものがあったのです。その日は面談のアポイントを取って、そのまま別れました。

アポイントの日、彼の事務所を訪れると、普段とは違うスーツ姿。絵にかいたようなイケメンではないけれど、優しそうな眼差しとすらりとした長身がいっそう素敵に見えて、私はドキドキしながら、事前に言われていた通り、保有している金融商品や保険証券などを見せました。恥ずかしくて前日まで迷っていたけれど、いい機会だと思い切りました。