次代を担える経営者が育つ組織風土づくりへ

鎌倉投信にとってもうひとつの大きな課題は、次世代の鎌倉投信を担う経営者が自然と育つ組織風土づくりです。前述したように、鎌倉投信は100年以上にわたって投資家から支持される資産運用会社を目指しています。

でも、誰にでも寿命はあります。私がこれから先90年近くも生きて、第一線で活躍できるはずもなく、したがって鎌倉投信のミッション、ビジョンをしっかり受け継いでくれる経営者を育てていかなければなりません。

現在、20名いる鎌倉投信のメンバーのうち4人が新卒採用の社員です。このうち、最初の新卒採用で入ってきた社員が30代になってきて、組織の中核として活躍しています。もとより、他社で経験を積み、鎌倉投信の理念に共感して入社してくれた中途社員は、即戦力として頑張っています。そういう人たちが今後、どのようにして経営人財として育っていくかが、これから10年のチャレンジのひとつだと認識しています。

最後に、鎌倉投信の活動を通じて実現したいことにもふれておきましょう。

正直、社会全体を大きく変えていこうなどとは考えていません。確かに、いい会社を応援することによって社会の質的転換がはかられ、持続性が高まることはあると思うのですが、一番大事なのは鎌倉投信に関わる個人一人一人の主体性です。

お金の遣い方は人によって千差万別であり、常に人の生き方、人生と密接に絡んでいます。結い2101への投資を通じて、個々人の生き方、働き方、生活の仕方が変わると、少しずつ社会がよい方向に進みだすということに、一人でも多くの人が実感してくれたら本望です。

(終わり)

取材・文/鈴木 雅光(金融ジャーナリスト)

●「運用資産の最大化を目的としない異色のファンド「鎌倉投信」の哲学」連載1回目はこちら