確認が欠かせない契約内容
身近なニーズに対応してくれる手軽な少額短期保険が多いが、留意すべき点も多い。
まず、生命保険などに加入したときに、支払い保険料に応じて所得税が軽減される保険料控除制度は、少額短期保険には適用されない。
従来の保険を扱う保険会社が破綻した場合には、「契約者保護機構」が資金を出すなどして契約者を保護することになっているが、少額短期保険の場合は、各社が法務局に拠出した供託金から資金を出す仕組みであり、契約者保護の観点からは劣るといわざるを得ない。
また、少額短期保険は、各種のニーズに応えてくれる重宝な保険制度とはいえ、際立つ特徴にのみ目を奪われることなく、享受できる利点とコストを比較するなどのチェックは欠かせない。増加するペット保険を一例として取り上げる。
コロナ禍の中、ペットを飼う家庭が大きく増大した。しかし、購入後にペットが慢性的な病気を持っていたことが判明し、動物病院にしょっちゅう通院する羽目になった人もいる。
2015年に実施した日本獣医師会の調査によると、犬を飼育する家庭の月間平均医療費は、超小型犬で7435円、小型犬で8217円、中型犬は8183円、大型犬の場合は9281円であり、年間にすると相当な金額になる。ましてや、重度の病気やけがとなると、多額の費用が免れない。
一方、ペット保険で補償されるのは医療費の50%か70%ということが多い。同時に年間の支払い限度額が70万円などと設定されていたり、1日当たりの上限額もあったりする。また、歯科治療や去勢あるいは避妊手術、さらにはワクチン接種も保険の対象外だ。
ペットも高齢化しているが、保険会社が設定した年齢の7歳や12歳といった段階になると、既契約の更新は可能でも、新規の契約はできないことにも注意が必要だ。さらに、高齢になると保険料は高い。大型犬の場合など、10歳時点で年間10万円強となり、0歳からの累計で100万円近くになることもある。
執筆/大川洋三
慶應義塾大学卒業後、明治生命(現・明治安田生命)に入社。 企業保険制度設計部長等を歴任ののち、2004年から13年間にわたり東北福祉大学の特任教授(証券論等)。確定拠出年金教育協会・研究員。経済ジャーナリスト。著書・訳書に『アメリカを視点にした世界の年金・投資の動向』など。ブログで「アメリカ年金(401k・投資)ウォーク」を連載中。