物価上昇に焦るFRB。金融引き締めを加速か

前回1月のFOMCは、利上げの開始時期や実施回数、さらにFRBのバランスシート縮小の今後の方針を探る会合となった。特に注目が集まったのがパウエル議長によるFOMC終了後の記者会見だ。パウエル議長は記者から利上げの実施回数を会見で問われた際、毎会合での利上げの可能性を明確に否定しなかった。年8回開催されるFOMCだが、1月を除くと残り7回の利上げの可能性も否定できないということになる。市場関係者からは想定以上に、金融引き締めに前向きで利上げ賛成派であるタカ派的なスタンスだと受け止められ、それが世界で株価の大幅な下落につながった。

改めて雇用の最大化と物価の安定を使命に掲げるFRBの金融引き締め策を、段階を追ってひもときたい。2020年に世界で新型コロナウイルス感染症が感染拡大し、各国政府や中央銀行は大規模な金融緩和や財政政策で対応にあたった。その結果、金融市場は正常な経済活動に必要とされる水準を上回る過剰流動性相場になり、カネ余り現象が続く。だぶつく運用マネーが株式市場を押し上げるいびつな状況を生み出した。ワクチン接種が進み経済回復も進む中で、FRBは金融政策の正常化へかじを切り始めた。

米での想定を上回る物価上昇を受けてFRBは、2021年11月以降、タカ派傾向を強めていく。FRBは11月に量的緩和の縮小を指すテーパリングを開始した。テーパリングのペースを加速し、12月のFOMCでは2022年3月に終了することを決定した。テーパリングによって資産の買い入れ額を縮小するものの過剰流動性相場は続き、地ならし状態だ。過去に当時のバーナンキFRB議長が早期の金融緩和縮小を示唆し、金融市場が混乱に陥ったバーナンキ・ショックもあったことからFRBは慎重な姿勢を見せる。

米国での物価上昇に焦るFRBは、早期にテーパリングを終わらせて、利上げ開始時期のタイミングを探る次の局面に入った。1月のFOMCでは、利上げの開始時期は想定通り3月とFOMCの声明でも示唆された。