暗号資産の利益にかかる重税感も普及阻害の要因に

では、なぜ暗号資産が根付かないのでしょうか。もちろん投機性の高さも、ハードルの高さにつながっていると思います。代表的な暗号資産であるビットコインの値動きを見ると、2021年1月は1BTC=297万円から取引がスタートし、4月の高値が1BTC=703万円。そこから急落して5月に1BTC=307万円の安値をつけ、11月には1BTC=775万円まで上昇。2022年2月18日現在は1BTC=456万円という値動きになっています(DMM Bitcoinの現物相場)。極めて短期間で価格が倍、あるいは半分近くまで値下がりするほどのボラティリティの高さですから、ある程度、投資慣れしている人でなければ、手を出しにくい面があります。

もうひとつ、暗号資産のハードルを上げているのが、税金面の問題でしょう。暗号資産の取引で得た利益については、「雑所得」扱いになっているため、確定申告によって納税する必要があります。雑所得なので、会社員などの給与所得者で、原稿料や講演料など副業による所得が無ければ、年間20万円までであれば確定申告をしなくても済みますが、前述したように、2021年のビットコインの値動きを見ると、1BTC=297万円が年初で、11月には1BTC=775万円まで値上がりしていますから、この間に売買して利益確定をした人は、納税義務が生じている可能性があります。また、雑所得の場合、給与所得なども含めた所得金額にもよりますが、税率は最高で45%になります。年収が600万円で、暗号資産の売買で得た利益が400万円であれば、合計の所得金額が1000万円になるので、税率は33%が適用されます。また、これとは別に住民税が加わりますので、どうしても重税感があります。

この点、株式の売買益や配当金への課税は、特定口座で源泉徴収ありを選択すれば、20.315%の税率で済みます。つまり暗号資産の場合、利益の額が大きくなるほど税率が高くなることに加え、確定申告という個人にとっていささか面倒な手続きをとらなければならない点が、ハードルの高さにつながっているものと思われます。

2021年1月1日から12月31日までに暗号資産の売買で利益を得た個人は、2022年提出分の確定申告期間中に納税手続きをとらなければなりません。2020年と2021年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で確定申告期間が延長されましたが、2022年からは通常スケジュールに戻ります。期間は2月16日から3月15日までです。適切に税金を納めないと「延滞税」や「重加算税」というペナルティが課せられるのに加え、悪質であるとみなされると税務調査が行われるので要注意です。