いい会社に上場、非上場もない。現地に赴き話し合い、投資する

「結い2101」の運用に関する具体的な中身についても触れておきたいと思います。コロナ禍の影響でなかなか進められませんでしたが、投資する「いい会社」を選ぶ時には、企業に出向いた現地調査を重視しています。経営者インタビューはもちろんですが、できるだけ現場に赴いて、社員の方と接することを心がけています。モノを作っている会社であれば工場に、実店舗を構えている会社であれば店舗に行って、そこで働く社員の方々の働く姿や、社内の掲示物がどのようなものかを観たりします。それだけで会社の雰囲気や風土が分かります。

こうして、なるべく大勢の人に会ったうえで、鎌倉投信として共有している投資の判断基準に合致しているかどうかを確認していきます。このスクリーニングに合致した企業は、最終的に投資政策委員会という会議に上げて、そこで最終的に投資するかどうかを決めます。

現在、社数では67社(2022年1月末現在)に投資しています。このうち6社は非上場企業です。基本的に公募の投資信託は、時価評価や流動性などを考慮して上場企業の株式にしか投資しませんが、「いい会社」に上場も非上場も関係ないので、私たちは非上場企業も投資対象にしています。

ただし、基準価額を日々算出するうえで、時価が公表されていなければなりませんから、非上場企業への投資は、日々の時価評価が困難な株式ではなく一定の時価算定ルールが定められている債券(社債)でおこなっています。一方、非上場企業への投資は、上場企業に比べると当然信用リスクも高いので、ポートフォリオ全体の2%程度に留めています。

それと同時に、いい会社は等しくいい会社なので、原則として等金額投資を心がけています。つまり、会社の規模や時価総額に応じて組入比率を決めたり、この会社の株価は目先値上がりしそうだから組入比率を5%まで高めたりといったことは一切しないようにしているのです。

ところで「結い2101」の運用に関して時々質問されるのは、「なぜそこまで現金比率となるキャッシュポジションが高いのか」ということです。直近で作成した運用報告書(2021年7月)に記載されているキャッシュポジション比率が34.6%ですから、日本株アクティブ運用を標榜する投資信託としては高めです。

これは最初に商品設計をおこなった時に、個人のお客さまが精神的に安心できるようなリスク(価格変動率)水準にしようと考えたからです。たとえば日本株のインデックスファンドの場合、大体年平均20%くらいのボラティリティ(価格変動率)があるのですが、「結い2101」だと10%くらいのボラティリティを想定しています。そうすれば、コロナショック時のように、わずか2週間でマーケットが30%も下げるような局面でも、結い2101の基準価額はその半分程度の下落で済みます。
このように、マーケットが大きく下げた時でも不安感を抱かずに済むようなポートフォリオを構築すれば、初めて投資を始めた人でも長期保有できるのではないかと考えたのです。そのためキャッシュポジションを高めにしているのです。