事欠かない無常観を伝える古今東西の至言

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵におなじ」

胸に迫る、おなじみの『平家物語』の冒頭部分だ。豊臣秀吉の辞世の句「露と落ち 露と消えにし 我が身かな 浪速のことは 夢のまた夢」を連想させて、人生のはかなさが胸を打つ。

鴨長明の『方丈記』も、常ならぬ人生を説く。「ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」。切々と無常観を紡ぐ作品だ。

無常の世を訴えるのは、日本人だけではない。シェークスピアも『お気に召すまま』の第2幕で、“All the world’s a stage, And all the men and women merely players.”と説く。人間はみんな、舞台劇の役者のようなものだ。舞台でのことを気にするな。持っている金も地位も、舞台の上でのものであり、一切のものは流転する。全ては常ならずと、人生の移ろいをつく。

第16代ローマ皇帝のマルクス・アウレリウスも、『自省録』で「すべてかりそめにすぎない。おぼえる者もおぼえられる者も。遠からず君はあらゆるものを忘れ、遠からずあらゆる者は君を忘れてしまうだろう」と述べている。

一方、かつて30年ほど前だと思うが、ある大手商社の社長が語った言葉がある。「たった一回しかない人生だから、しっかり楽しむ。人間どう生きていくのか、社会に対する会社に対する責任もあるが、何といっても自分自身に対する責任が最も大きい」――いまだに忘れられない言葉だ。

人それぞれの人生、納得のゆく人生にしたいものだ。

執筆/大川洋三

慶應義塾大学卒業後、明治生命(現・明治安田生命)に入社。 企業保険制度設計部長等を歴任ののち、2004年から13年間にわたり東北福祉大学の特任教授(証券論等)。確定拠出年金教育協会・研究員。経済ジャーナリスト。著書・訳書に『アメリカを視点にした世界の年金・投資の動向』など。ブログで「アメリカ年金(401k・投資)ウォーク」を連載中。