築100年近い鎌倉の古民家を改築し、長く続けるという覚悟を
投資の判断軸や運用のコンセプトを固めた後、どこで起業するか、どこに本社を構えるかという点を議論しました。自分たちの思想、信条を伝えやすい場所で起業したいというのが、4人の共通認識でした。
そうなると、起業する場所はおそらく東京ではないし、本社を構える建物も駅に近いオフィスビルでもありません。古くからあるものを大切にしながらも、新しいものに挑戦していく、そういう気風を持ったところに本社を構えようということになりました。
例えば、京都は候補地のひとつになり得る場所でしたが、創業メンバーが皆、関東圏に住んでいたので、物理的に距離が離れた京都に行くのは現実的ではなく、鎌倉にしようということで一致しました。鎌倉には、自然があり、伝統文化がある一方、日本で初めて武家政権が樹立されたり、日本で初めて環境保護運動が育ったりした場所でもあります。
社屋は、当時築80年の古民家を見つけました。私たちの運用コンセプトとも一致するのですが、様々な時代の流れを超えて100年近く続いてきたものには、意味があると思うのです。
基本的にモノがよくなければ続きませんし、周囲との調和、バランスも必要です。そもそもそこに住む人の想いがつながらなければ、100年は続きません。私たちの夢は、次の世紀につながる、100年超えの投資信託を創りたいということですから、それを象徴するような場所が必要だったのです。
ちなみに築90年の古民家ではありますが、今ではオフィス内はかなりのハイテクです。東日本大震災があった時は、受益者の方々から「鎌倉投信の本社は大丈夫なのか」という心配の声をたくさんいただいたのですが、平屋で梁も太い在来工法の日本家屋はびくともしませんでした。
ただ、大勢の方のお金の運用を託されている以上、一定のセキュリティレベルが求められますし、災害時の事業継続マネジメントという点でも、業務運営を分散させた方がよいということもあり、今は鎌倉の本社に加え、リスク回避のためのBCPサイトを構え、社員を配置しデュアルオフィスで運営しています。