公務員は「年単位拠出」がお好きですが……

もう一つ、「年単位拠出」の届出をしている人が多いのも、公務員の特徴です。iDeCoは毎月定額積立が原則ですが、2018年1月より、積立を1年の単位で考え、加入者が年1回以上、任意に決めた月にまとめて積み立てることも可能になりました。これを「年単位拠出」と呼びますが、この利用者の割合※2は、iDeCo加入者全体で3.10%のところ、公務員は4.98%となっているのです。

※2 出所:国民年金基金連合会「iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況(2021年11月時点)

一般的に「年単位拠出」のメリットとは、ボーナス月に多めに積み立てできることだと言われます。でも、毎月、ほぼ上限金額で積み立てをしている公務員には当てはまらないでしょう。むしろ、積み立てるときに掛金から差し引かれる国民年金基金連合会の手数料負担(1回あたり税込105円)を減らすために利用しているのだと思います。iDeCoの事務手数料は定額ですから、掛金が少なければ少ないほど負担割合が増すことになるのです。公務員はiDeCo掛金の上限金額が一番低いわけですから、これも「公務員ならではのiDeCo戦略」、そんなふうに言えるかもしれません。

でも、手数料負担を最小化するべく年1回積み立てにすると、積立投資の時間分散効果が損なわれることになるので、私はおすすめしていません(苦笑)。でも中には、強者(つわもの)もいて、「年1回積み立てで定期預金に配分後、毎月、1/12ずつ投資信託に自分で預け替え※3してます!」との話を伺ったときは、私も返す言葉が見つかりませんでした……。間違いなく私なら、預け替えを忘れてしまうでしょうね。自分にはできそうもないので、こちらも人にはおすすめしていません(苦笑)。

※3 保有資産を売却し、別の商品を購入すること。「スイッチング」とも言われます。

何だか、苦笑いの多い話になってしまいましたが、最後に「年単位拠出」派の公務員の皆さまに、もう一つだけお伝えしなければならないことがあります。実は、公務員のiDeCo掛金が月額2万円にアップする2024年12月、その代わりと言っては何ですが、「年単位拠出」ができなくなる予定です。これは、iDeCo掛金を月単位で管理することになるため、というのが理由ですが、企業年金制度のある会社員も同様です(企業型DC加入者は2022年10月からiDeCoで「年単位拠出」ができなくなります※4)。先ほど、「公務員ならではのiDeCo戦略」と少し持ち上げておきながら、「でも、年単位拠出はできなくなるんですよ」なんて、意地悪にも程がありますが、お伝えしないわけにもいきません。もう決まったことですので、そこはお気持ちを切り替えてもらい、公務員にとって残り3年の「年単位拠出」を「公務員ならではのiDeCo戦略」として初志貫徹してください。

※4 最終的にiDeCoで「年単位拠出」ができるのは、自営業者等、企業年金のない会社員、そして、専業主ふの皆さまだけになります。

最後はちょっとマニアックな話になってしまいました。繰り返しになりますが、こんな話も「そんなのiDeCoの常識だよ~」なんて軽くいなしてくれる、そんな方が多くなれば嬉しいですね。でも、iDeCoを通じた「貯蓄から資産形成へ」もまだまだ道半ば。私も微力ながら、今後ともiDeCoの普及に努めたい、そんなふうに思っています。