純資産総額が大きければ運用成績はいい?
では、逆はどうでしょうか。つまり、「純資産総額の規模が大きい投資信託は運用成績が良くなる」と断言できるのでしょうか。膨大な運用成績のデータを用いて定量分析すれば、この点に関する因果関係も見えてくるかも知れませんが、複数のファンドマネジャーにインタビューしたところ、「純資産総額の規模が大きければ運用成績が良くなるということはない」という声が多かったのも事実です。インタビューに応じた中小型株式を主要投資対象とする国内株式型(アクティブ型)ファンドの運用担当者5人によると、「特に中小型株式のファンドには適正規模がある。それはおおむね300億円前後」と口をそろえます。
たとえば純資産総額が1000億円の中小型株ファンドがあったとしましょう。その純資産総額のうち5%まで特定の銘柄に投資しようとしたら、投資金額は1000億円のうち5%ですから、総額で50億円になります。
ちなみに東証1部上場銘柄で最も時価総額が小さい企業は、広島県を地盤としたコンビニエンスストア運営のポプラで、1月4日時点の時価総額は17億9174万円です。極端な例ではありますが、時価総額が17億円しかない企業に50億円の資金を入れることはできません。つまり、投資信託のサイズ(純資産総額)が十分に入れるだけのマーケットであるかどうかが、大きな問題になるのです。
今回、取り上げたレポートにもあるように、小規模投信のリターンが大規模投信に比べて劣後することは、いくつかのデータを検証してほぼ正しいと結論づけられそうです。それと共に、純資産総額の規模が大きな投資信託に関しても、投資先となるマーケットの市場規模が、そのサイズの資金を受容できるかどうかについて、検証する必要がありそうです。
販売金融機関からすれば、売れ筋の投資信託はどんどん販売して、手数料を稼ごうとするのは、ある意味、合理的な行動です。しかし、それを野放しにせず、その投資信託の規模が投資対象とするマーケットの適正規模を超えそうになった時、潔く売り止めにする理性を持つことが、投資信託会社には求められます。