一般的に、「投資信託は純資産総額の規模が小さいものを買わない方がいい」とされています。理由は、規模が小さいほど「繰上償還されるリスクが高まる」から。繰上償還とは、あらかじめ定められている信託期間が到来する前に、運用を終え、投資家である受益者にお金を返還することを指します。信託期間が無期限とされている投資信託であったとしても、事前に電子媒体などで「繰上償還のお知らせ」(これを公告と言います)を掲載したうえで償還されることになります。

投資家に不利な繰上償還のリスク

ちなみに繰上償還公告が公表されるのと同時に「書面決議」といって、繰上償還に応じるかどうかの賛否が採られます。これは、運用会社から「議決権行使書面」という書類が送られてくるので、繰上償還に反対する人は、その書面を送り返すことによって、繰上償還に反対の意を伝えることができます。なお、この書面決議では、議決権を行使できる受益者の議決権の3分の2以上に相当する賛成をもって、繰上償還が可決されます。
繰上償還されると、その時点で運用は終わりになるので、投資信託に組み入れられている株式や債券がすべて売却され、現金化されたうえで受益者に返還されます。ただ、繰上償還される日の基準価額が、受益者が購入した時の基準価額よりも値下がりしていた場合は、言うまでもありませんが、その受益者にとっては元本割れの損失を抱えた状態での償還になります。このようなリスクがあるので、「投資信託は純資産総額の規模が小さいものを買わない方がいい」と言われているのです。
それに加えてもうひとつ、実は純資産総額の規模が小さい投資信託は、全体的に運用成績が劣後する傾向にあるというレポートが発表されました。日本証券経済研究所の「証券レビュー(第61巻第12号)」に掲載されているもので、同研究所の特任リサーチ・フェロー、明田雅昭氏によるものです。
その分析によれば、2020年12月末までに過去5年の運用実績を持っている3184本のアクティブファンドの純資産総額を5分類して、最小を1分位、最大を5分位とすると、総費用控除後の平均年率リターンは、以下のようになります。
第1分位・・・・・・2.81%
第2分位・・・・・・3.13%
第3分位・・・・・・3.95%
第4分位・・・・・・4.39%
第5分位・・・・・・4.99%
確かに、純資産総額の規模が最も大きい第5分位に近づくほど年率リターンが向上していることが分かります。では、なぜそのようなことが起こるのか。ここがこのレポートの注目されるところです。