小さいファンドが不利とされる複数の仮説

一般的に指摘される点としては「純資産総額の規模が小さいほど総経費率が大きくなるため、総経費控除後のリターンが悪くなる」、「小規模投信は十分な分散投資ができないため、運用者が望むポートフォリオを構築できない」、「小規模投信ほど銘柄売買の取引額が小さいため取引コストが割高になる」、「大規模投信の方が販売会社が多く資金の流出入が頻繁で、信託財産留保額がたまりやすい」、「小規模投信は現金ポジションが大きく、その分リターンが鈍化する」といった点が挙げられるものの、明田氏は、「これらのナイーブな仮説だけでは(小規模投信の運用成績が劣後する)謎解きは終わりにできない」としています。つまり、この5つの仮説だけでは、小規模投信の運用成績が悪化するという合理的な説明になっていないということです。
これらに明田氏は、次の3つの仮説を追加しています。それは……
「流行のテーマで設定したものの、短期間でブームが去り、さらに資金を集めることができず、割高な株価で株式が組入れられたまま放置されている」。
「複数をかけもつ運用者は、小規模で販売金融機関から注目されない投資信託を真剣に運用していない」。
「小規模で販売金融機関から注目されていない投資信託は、新人など熟練度の高くない運用者の練習用に使われている」。
というものです。いずれも検証する必要はあると思いますが、可能性としては十分に考えられることでしょう。実際、小規模投信については新人ファンドマネジャーの練習用に用いられているというのは、昔から投資信託業界でもよく言われていることでした。
ただ、ある運用会社の経営者の話によると、「昔はそういうこともあったと聞いているが、今はやっていない」と言っていましたし、そもそもこの点を外部の人間が検証することは難しいので、「そういうこともあるかも知れない」という程度に受け止めておく程度が良いでしょう。いずれにしても、わざわざ純資産総額の規模が小さい投資信託を買う意味は、何もないということです。