なぜギャンブルに負ける? ギャンブルの「還元率」

ギャンブルは勝つと大金を手にできますが、現実はそう甘くありません。基本的に必ず負けるようにできています。理由を「還元率」を通して考えてみましょう。

還元率は、ギャンブラーが支払うお金と受け取るお金の割合を表しています。例えば1万円賭ける場合、還元率120%なら1万2000円を受け取れる計算です。つまり還元率は100%が損益分岐点であり、100%を下回る場合はギャンブラー全体でみると必ず損となります。

そして胴元の利益を考えると、還元率が100%を超えることはないと分かるでしょう。集めたお金以上の還元は通常考えられません。そんなことをしては胴元が損してしまいます。

実際には集めたお金から胴元の利益を抜き、残りがギャンブラーに還元されるでしょう。例えば胴元が集めたお金の10%を利益として取る場合、還元率は90%となります。

還元率は法律の壁もあります。例えば「くじ」は「当せん金付証票法」という法律で、還元率が50%を超えないよう定められています。つまり、1万円の宝くじを買っても5000円までしか当たりません。

【当せん金付証票法5条「当せん金付証票の当せん金品の限度」(一部抜粋)】

当せん金付証票の当せん金品の金額又は価格の総額は、その発売総額の五割に相当する額……をこえてはならない。

出所:e―GOV法令検索 当せん金付証票法

また「競馬」の場合、「競馬法」という法律で農林水産大臣が定めた率以下までの還元率しか認められません。投票法ごとに異なりますが、還元率は70~80%にとどまります。

【競馬法8条「払戻金」(一部抜粋)】

日本中央競馬会は……その競走についての勝馬投票券の売得金……の額に百分の七十以上農林水産大臣が定める率以下の範囲内で日本中央競馬会が定める率を乗じて得た額に相当する金額……を、当該勝馬に対する各勝馬投票券に按分して払戻金として交付する。

出所:e―GOV法令検索 競馬法

【勝馬投票法ごとの還元率(払戻率)の例】

 

胴元の利益および法律から考えて、還元率は通常100%を上回りません。したがって、ギャンブルは基本的に負けるようにできているのです。

ギャンブルはあくまでレジャーとして楽しみ、失っても問題がない金額で行いましょう。

投資とギャンブルの違いは?

ギャンブルの場合、ギャンブラーが出したお金をギャンブラーで分け合う仕組みです。ギャンブラーが出した以上のお金は分配されません。例えば全ギャンブラーが合わせて100万円をテーブルに乗せたとき、100万円を超える分配はありえないのです。胴元の利益を無視しても、還元率が100%を超えることはありません。

では投資ではどうでしょうか。例えば株式投資の場合、取引所の売買だけならギャンブルと同じく投資家同士でお金を分け合っているだけです。しかし投資家は配当金などを通じ、上場企業からもお金を受け取ります。つまり、その上場企業が利益の還元を行うと還元率が100%を超えるため、投資家全体でみると必ず利益を得られるのです。

ただし、企業が赤字の場合は利益還元されません。この場合は取引所での売買による利益しか期待できないため、ギャンブルに近くなります。投資対象の見極めが大切でしょう。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。
AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。