会社分割による株価への影響は?

株式会社の法的な所有権を有するのは株主だ。企業の経営陣は株主の利益をいかに高めるかに注力しなければならない。東芝が会社分割を打ち出した背景にも、コングロマリット・ディスカウントの解決により企業価値向上を望む、機関投資家の意見があったとされている。株主の利益を左右するのは企業の株価だ。では、会社分割を効果的に活用できた企業の時価総額はどのような推移を見せるのだろうか。

会社分割の成功事例として挙げられるのが米パソコン製造大手ヒューレット・パッカード(HP)社だ。同社は2015年に企業向けツール部門を別会社として分離。HP社本体は中核事業であるパソコン、プリンター事業に専念した。分割前の時価総額は450億ドルほどであったが、パソコン事業の業績拡大が企業価値の見直しに大きく貢献。2021年10月末の2社の時価総額の合計は約550億ドルと大幅に増進した。

米化学大手のダウ・デュポン社もコングロマリット・ディスカウントへの対策から、2019年に農業・素材・特殊産業材の各事業を3社に分割した。分割直前における同社の時価総額は約1200億ドル。会社分割後の21年10月末は合計約1100億ドルと20%ほど減少したが、内訳を見てみると、減少したのは「特殊産業材」のみだ。「農業」「素材」を担う2社の時価総額はそれぞれ約42%、約13%と大きく上昇している。会社分割によって成長力のある事業が、採算性の低い事業に足を引っ張られなくなった例といえる。

東芝やジョンソン・エンド・ジョンソンなど計画段階にある直近の事例では、分割発表直後に株価は一時的に上昇したものの、その後は上昇トレンドに至っていない。会社分割の成否は分離後、それぞれの会社が経営の効率化によって業績を拡大し、対外的な企業価値をどれだけ高められるかにあるのだ。

東芝が国内の成功事例になるか注目

デジタル、脱炭素化の加速や世界的なパンデミックなど、経営をとりまく環境は目まぐるしく変わっている。相次ぐ分社化の背景にはこうした流れに対応すべく、経営資源の“選択と集中”を行い競争力を確保していく狙いがある。

会社分割の事例が少ない日本では2017年、分離・独立した企業に対して優遇課税措置をとるスピンオフ税制が導入された。日本政府も各産業の国際競争力を高めるべく、国内企業の事業再編を支援する考えだ。東芝が成功モデルとなれば国内における会社分割の流れもさらに加速していくだろう。