目的は「コングロマリット・ディスカウント」の解消

総合電機メーカーと称される東芝は、消費者向け家電・パソコン製造のほかにも、エネルギー開発やITソリューションの提供など多岐にわたる事業を展開している。東芝のように性質の異なる複数の事業体を傘下に収める企業体形態は「コングロマリット(複合企業)」と呼ばれる。

コングロマリット化にはいくつかのメリットがある。主な利点は経営のリスク分散。ある事業が赤字となっても、ほかの事業で利益がでていれば、グループ全体の損失を抑えられる。さらに、ある事業で獲得した知識・ノウハウをほかの事業で生かすこともできる。また、それぞれの事業の顧客をグループ内で囲い込みしやすい点も大きなメリットだ。

しかし、一方でコングロマリットには企業価値が各事業の価値の合計よりも過小に見積もられてしまう「コングロマリット・ディスカウント」という問題も生じうる。企業の成長がどの事業によるものかわかりづらく、正当な評価がされない恐れがあるのだ。ほかにも、資金や人材といった経営資源の分配を効率的に行えない場合、グループ全体の競争力が落ちてしまう可能性もある。

これら問題を解決する手法の一つが会社分割だ。具体的には、以下のような効果が期待できる。

(1)会社ごとに経営戦略を明確化でき、中核事業に専念できる
(2)それぞれの会社が独自の意思決定をしやすくなる
(3)各事業が株式市場を通して、適正に評価されやすくなる
(4)金融機関や投資家が融資・投資をしやすくなり、企業は効果的な資金調達が行える

東芝は2021年度第2四半期の決算説明会で、会社分割によって「経営体制の改善や資本配分の効率化」が見込めるとメリットを説明した。これは上記の効果の(1)に該当すると言える。また、株主への利益還元に大きく寄与することも強調していた。