在職老齢年金とは

厚生年金保険に加入している60歳以上の人が働きながら老齢厚生年金(報酬比例部分)を受け取る場合、給与や賞与と老齢厚生年金の合計額が一定の基準額を超えると、その合計額に応じて老齢厚生年金の全部または一部が支給停止されます。この仕組みを「在職老齢年金」と言います。つまり一言で言えば「働いている」ことが原因により、年金の受給額が調整されてしまう制度です(計算方法については後述します)。

かつての年金制度は支給開始年齢要件に加え、「退職」を支給要件としており、在職中は年金を支給しないことが原則となっていました。働いても高齢期の賃金が低額になることが多く、生活が困難になる人も少なくなかったため、在職老齢年金制度が創設されました。経緯が分かれば、なるほどと思うかもしれませんね。

日本人の平均寿命は在職老齢年金制度導入期の昭和40年代と比べ、生活環境の改善、食生活・栄養状態の改善、医療技術の進歩などにより、10歳程度延びています。さらに経済的理由だけでなく、生きがいのために元気なうちは働き続けたいと考える高齢者が増えています。“働き過ぎると年金が減ってしまう”在職老齢年金の制度下では高齢者の就労意欲が低下する恐れがあるため、現役世代の負担に配慮しつつ、働いても年金が不利にならないような見直しがなされてきました。