現金社会は年間1兆円のコストがかかる
政府は現在キャッシュレス化を推進しています。2019年10月の消費増税に合わせて行われた「キャッシュレス・ポイント還元事業(2020年6月に終了)」が記憶に残っている方も多いでしょう。
なぜ政府はキャッシュレスを推進しているのでしょうか。理由は現金社会のリスクとコストにあります。
3億円事件に代表されるように、現金は盗難や紛失のリスクがあります。警視庁によると、2020年に受理された現金の遺失届は約61.1億円(※)に上りました。届け出られていないものも含めれば、さらに多くの現金が失われているでしょう。
現金社会を維持するためのコストも問題です。経済産業省のレポート「キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識(2018年2月)」によると、銀行券・貨幣の製造コストは650億円程度ですが、現金決済インフラを維持するために年間1兆円を超える費用が発生しているようです。
【主な現金決済インフラの維持コスト】
・現金関連業務人件費:5000億円
・ATM機器費・設置費:4120億円
・ATM事業運営経費:1460億円
・警送会社委託費:1400億円
・現金関連業務窓口人件費:1000億円
もしもキャッシュレス社会が達成できたとき、事業者はこれらのコストをより有望な別の事業へ振り分けることができます。新しいサービスや商品の提供が生まれれば、私たち消費者にとってもメリットがあるでしょう。
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。
AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。