2024年8月のメガバンクの売れ筋トップは、前月同様に三菱UFJ銀行と三井住友銀行で日経平均株価に連動するインデックスファンドになるとともに、国内株価に連動するインデックスファンドのランキングが上がった。前月と異なるのは、米国NYダウ、全世界株式(オール・カントリー)など主要株価インデックスに連動するファンドのランキングが下がったことだ。前月は三菱UFJ銀行のトップ10に入っていた「eMAXIS NASDAQ100インデックス」や「iFreeNEXT FANG+インデックス」はトップ10圏外になった。また、みずほ銀行は「キャピタル・インベストメント・カンパニー・オブ・アメリカ ICA」がランクアップしたことで、「キャピタル世界株式ファンド」とともにキャピタル社のグローバル株式ファンドの存在感が高まっている。

 

メガバンク3行の売れ筋ランキングは、三菱UFJ銀行と三井住友銀行が「総合」ランキング、みずほ銀行は「みずほインターネット投信除く、積立契約も除く」としている。

◆米国株式市場への警戒感で「マグニフィセント・セブン」人気に陰り?

8月の売れ筋ランキングでは、三菱UFJ銀行で「eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)」が新たにトップ10にランクインするなど、国内株式インデックスファンドがトップ10のうち4本を占めた。米国株式インデックスは「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」こそ、前月と同様に第2位をキープしたものの、他はランク外となり(前月は3本ランクイン)、トップ10には1本だけになった。「米国株式から国内株式へ」という流れが明瞭になった。三井住友銀行でも「三井住友・NYダウ指数・オープン(為替ヘッジなし)」が第3位から第4位に後退し、新たに「エス・ビー日本株オープン225」が第9位にランクインするなど、米国株式が後退し、国内株式が浮上する動きになっている。

日米の株価は、7月31日に日銀が実施した利上げによって日本の株価が大きく崩れ、米国では雇用統計の悪化などで景気後退懸念が高まったこともあって米国株価も下落した。そして、それぞれ8月上旬に底入れして反発に向かう動きとなったが、米国株価は8月26日にはNYダウが史上最高値を更新し、S&P500も史上最高値に近い水準にまで株価が戻ったものの、日本の株価は8月末になっても日経平均株価が最高値から8.5%安、TOPIXは同7.4%安の水準だった。既に下落場面から過去の高値まで全戻りした米国株式は押し目買いが成功裏に終わって反対売買も実行されたということなのかもしれない。日本株式については、下落からの戻りは60%程度にとどまるため、依然として押し目買いの動きが続いているとも考えられる。

ただ、三菱UFJ銀行のランキングから「eMAXIS NASDAQ100インデックス」や「iFreeNEXT FANG+インデックス」が消えたのは、米国株式市場への警戒感の現れだろう。これまで米国株式市場をリードしてきた「マグニフィセント・セブン」といわれた大型ハイテク株は、割高が指摘されつつも株高が続いてきた。それが、米国景気の減速感(FRBが利下げを検討するほどの減速感)が強まることによって、今までの高いPER(株価収益率)を維持できなくなるのではないかという懸念だ。

この懸念については、実際にFRBが利下げに動いた後の株式市場の変化を見る必要がある。米国経済はFRBの金融政策の後押しも受けてソフトランディング(景気後退を経ずに次の成長に復調する)の期待もある。史上最高値を更新するほど戻った株価はソフトランディング期待によるものだろう。再び米国株式ファンドへの人気が戻るのか注目したい。